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「おーい、出かけるなら声、掛けてから行けよ~。家出になるぞ~」
すっかり眠り込んでいるものだと思っていたから、黙ったまま行こうと思っていたのに。
否。
わざとこれを狙っていたのに。
そっ、と住み慣れた家に別れを告げようとしていたロックは、背後から家主が軽口混じりで声を掛けてきた事に驚き、身体を揺らす。室内に明かりは無く、入り込んで来る街灯で薄闇を作り出していた。
声のする方へと振り返ってみれば、部屋の戸口へ片肘を付き、拳を握りこめかみを押さえている影がある。表情は、影が多く在る所為でぼやけていた。
「家出って……そんなつもりじゃ無いんだけど、テリー」
「そうか。なら、『行ってきます』ぐらい言っても良いだろ、ロック?」
ロックが『テリー』と名を呼んだ此処の主は、立っている位置から動くことはせず、挨拶は置いて行けと言う。
しかし、彼にはその『挨拶』を、此処へ置いて行く事が……勇気が無かった。
**
幼い頃は唯、彼と共にずっと居たいと願うだけだった。
しかし時が経つに連れ事実を知り、幼いままでは居られないのだと、このまま優しい彼の傍へ居る事は『罪』ではないか?と思い始める。
日に日に、彼の姿形を目にする度に、罪の意識に苛まれていった。
(何時、帰るなんて約束出来ないのに挨拶……出来る訳、無いだろう!)
そして――――
『ホントウ』を手に入れる為に今日、この部屋を、ずっと傍に居たいと願ったテリーの元を去ると……ロックは決めたのだ。
**
「おーい、聞こえてるか?挨拶だよ、挨拶!!」
「きっ、聞こえてる!」
声だけは陽気な色をしているのに、闇の色が一番似合わない彼が、その闇から一歩たりとも動かずに居る。顔を見てしまうと別れ難くなる――――と言うかの様に。
薄闇の中、ぼやけたテリーの表情は見ることが出来ず、何を感じているのだろうかとロックは思う。
本音を言えば、離れてしまいたく無い。
だが、それでは先に進めない……
きっとテリーは自分の行動の理由に気付いている。
だから、そこから一歩も動かずに、顔も見せずに……明るい声だけで送ってくれるのだと。
ぶれてしまいそうな心を、拳を握り締めてロックは奮い立たせ、テリーの気持ちに応えようと声を絞り出す。
「――――いっ……」
「おまえの帰る場所は、此処だけだ。忘れるな――――何時までも待っている。何時までも帰りを待っている。ロックの本当の居場所は……此処だけだ!」
――――必ず帰って来い!!
気楽な声から一転したテリーの叫びが、胸に突き刺さる。
握り締めた拳へ更に力を込め、溢れそうな涙を顔を上げて堪えるロックは、約束をする様に声を上げた。
「テリー、行ってくるよ!!帰ってきたら……ちゃんと『お帰り』って言ってくれよ!!」
「OK、ロック!約束だ!!」
そう言って、何時叶うとも判らない約束をするテリーは、薄闇の中からロックへと帽子を放り投げた。
受け止めたロックは、それを高く掲げもう一度『行って来ます』と張りのある声を上げるのだった。
promise(約束)
20100625
結局、ヤホーの翻訳を使おうとしたんですが、文章(台詞)長くなって止めました。苦笑。
言わせたいこと言わせたら、長なったテリーの台詞。
そんなこんなで、別れ話で祝いです(汗)
別れではあるけれど、二人には『始まり』であってほしい。
そして、離れていてもこの『約束』で何時までも心は繋がっているのだと……言いたかったんです。
同じような内容の話しを書いている予感、かなりするのですが……一応、書き下ろしって事で目を錘ってやって下さい!!
この約束が果たされる日まで……
果たされてもずっと繋がっていて欲しいな……と願いつつロック、誕生日おめでとうっ!!
ホントに小話で、端折りまくりで失礼しました!
――――ツイてねぇ。
しとしとと降り続けている雨空を見上げた紅丸は、胸の内だけでぼやいた。
久し振りに日本へと降り立ったと言うのに、出迎えてくれたのは京が背負う日輪ではなく、湿気と憂鬱を運ぶ雨だとは。
空港の到着ロビーを苛々と、早足で闊歩して行く紅丸だった。
――――今年もまた、始まる。
握り締めた白い封筒を、更に強く握り皺だらけすると、乱雑にポケットの中へ突っ込む。
そう、それは……招待状。紅丸も、招かれた武人の一人として、何年と連れ合って来た仲間達と合流する為に、この地に戻って来たのだ。
サングラスで目元を隠していたが、彼の存在感は素晴らしく、長身で均整の取れた身体付きで、麗しい金色の髪をなびかせて歩く姿を誰もが感嘆と見つめる。
目指す場所は唯一つと、大勢の視線を集めているのに我関せずでいる紅丸は、前だけを見据え無言で歩いて行った。
**
混雑するロビーを抜け、駐車場まで続く連絡橋までやって来た紅丸は、まだ降り止まぬ雨を見て覚悟を決める。
せっかく……これから逢うと言うのに、濡れて酷い姿なのは如何かと考えるも、そこはポジティブな紅丸。水に滴る何とやら、であった。
先ほどまで苛々としていたが、覚悟を決めてしまえば強いもので、この雨の降りしきる中、一歩を踏み出す。
と、同時に――――声が掛けられた。
「待てよ、そこのお兄さん……困ってるなら傘、入れてやるぜ?」
傲慢な台詞ではあったが、密やかに待っていたのだと声色で語られる。
紅丸は、声のする方へ髪を引かれ、心も惹かれて緩やかな動きを持って振り返る。
そこには、逢いたくて逢いたくて……心配で心配で仕方なかった人の姿が在った。
その人は、色気の無いビニール傘を手に携えて、紅丸が心配していたのを知っている癖に、マイペースに悠然とした表情をして見せていた。
「よぉ。お前があんまりにも心配するからよ、迎えに来てやったぜ」
――――有り難いと思え。
その人の……草薙京の、相変わらずの傍若無人振りに紅丸は、目尻を下げて泣いてしまいそうだったのを忘れそうになる。
いや、何時もの京で居てくれたのが嬉しいと、今まで抱えていた不安を消し飛ばした。
傘の花を開いて京は、紅丸をその中へと招き入れる。そして彼の腕を取り、自信の腕をゆったりとした動きで絡めた。
「……おっ、おい?!」
「誰が居てもいいさ、今は……心配させて悪かった」
余り自分からは触れたがらない京なのに、今は自ずと進んで紅丸の腕に触れ、身体を添わせていた。
それは、遠くにいた紅丸を心配させた事の恩と、彼の気持ちに対する恩の現れだった。
口伝えの下手な京の精一杯を汲み取った紅丸は、自由のある腕を上げ、目の前で揺れる黒髪をひと撫でして答えを返す。
――――お帰り、紅丸。
思いが伝わり嬉しいと、身体の温度を少し上げた京は、紅丸へ感謝を込めてこう囁くのだった。
雨の花
20100605
フライングっすが、紅丸、誕生日おめでとう!!
6月ってめちゃくちゃ誕生日多くて……原稿しなきゃ、と思いつつ小話(笑)
ちょっと今日は、仕事が早く終わったので何時もの如く、大好きスタバに引きこもりガリガリ。
慌ただしい小話ですが……お祝いに置かせて頂きました!!
13のストーリー、まだきちんと読んでないのですが、アッシュのストーリーをザッと読んでの話。(手元には拾って来たので、時間が出来たらユックリ読みます)
いろいろ気を回してる紅丸を意識しました。
次は京の番だし……ね。狙われるの。
あのゲーム、ほんとどうなるのか心配なんですけど……(汗)
やっぱり京上位の紅京になるんですが、これがきっと彼らのスタンスなんかなぁ~と何年も好きでいるCPです。
いろんな物が好きなんで途中フラフラしてる桜岡ですが、こうしてカンフル剤の様にネタが舞い込むと、そのCPに盛り上がる体質です(笑)
そんなこんなで久々の紅京でした……少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
改めて紅さん、誕生日おめでとう!!
さあ、明日は……祝いに行くぜ、京都へ!!
携帯も変えるぜ(笑)
ほんっとアホでスミマセン(爆)
あなたの縛られたココロ。
わたしに解く事はできますか?
今年も、草薙の家の桜は見頃を迎えていた。
風が舞うと花弁は空一面に散り、薄桃色した敷布が波打つように漂う。
花が満開になるのを見計らい、この地に四家を筆頭に縁ある人々を集わせ、園遊と洒落こむのだった。
「ただの宴会だろうが」
若き八神家次期当主・庵は、その場に飽きたのか人波を擦り抜け逃げ出した。
もとより、家の事もあって無理矢理引っ張って来られていただけなので、飽きたとか言う問題では無かった。
人付き合いの苦手な彼にとって、この様な集会は煩わしいもの。
極力、人目に付かないようにしていたのだが、細身で背丈もあり、何より鮮やかな緋色をした髪が逆に人目を引き付けていた。
話し掛けづらい無愛想な表情で居る庵へ注がれる他者の視線は、彼の苛々を増幅させるには十分だった。
我慢の限界を超えた庵は、黙ったまま庭の奥の奥へと歩いて行き、雲隠れをするのだった。
**
「……ふん。やっと静かになったか」
広い広い草薙家の庭は、大半が山になっていた。
道無き道を登り続けた庵は、漸く騒めきの無い静かな場所に来たと心の糸を解く。
少しの間だけ許せ、と桜に詫びを入れて庵は、その根元に腰を落ち着かせた。
人心地付けて深呼吸してみれば、薫風が身体の隅々にまで届き疲れを癒してくれる。
見目も華々しい桜の木々は、花弁を散らせて美しい舞を庵だけに披露してくれていた。
穏やかな春の日差しの中で一人、心身共に癒しを受けていたが……
人の気配を感じた庵は、素早く身を起こし闘いの構えを取る。
草薙の結界に護られていると言えど、どこかに綻びが生じていたのかも知れない。
「紛らわしいぞ、拳崇。出て来い」
「ごめん、ごめん!せやけどめっちゃ怖い顔して歩いて行くねんもん……気になるやん」
庵に出て来いと言われてひょこ、と桜と桜の合間から顔を覗かせたのは、椎家の跡継ぎ・拳崇だった。
無愛想にしている庵とは正反対で、何時も幼い顔を笑みで彩っている人だ。
今も、叱られていると言うの拳崇は、頭を掻きながら照れ笑いをしている。
もっとも、庵が本気で怒っているのでは無いと知っているから、何を躊躇う事なく笑っていられるのだ。
腰を据え片足だけをを延ばしている庵の傍へしゃがみ込んだ拳崇は、膝頭で両肘を支えると頬杖を付き、晴天を模した笑顔を浮かべる。
「退屈やったん?」
「愚問だな。それ以外に何がある」
「うーん、思い当たるトコはあんねんけど……」
笑顔から一転、拳崇は少し困った顔をして庵を見つめる。
目まぐるしく表情を変え口籠もる彼に、思い当たる箇所を話せと促した。
これを言えば本気で庵が怒り出しそうだ。
拳崇は、頭の片隅でそう思いながらも、言い出したのは自分だからと腹を括る。
それは無い、と否定の言葉を庵から幾度と聞いていた。
しかし、どうしても信じる事が出来なかった。
好いた人の言葉を素直に聞けない……拳崇の心に影を残す存在の名を口にする。
「この家に……草薙はんの血に縛られて、しんどいんかなぁ……って思ったんや」
言葉を吐くに連れ、徐々に小さくなる声に合わせて拳崇の頭も下へ下へと向かって行き、最後は返される真実(こたえ)が怖くて地面に視線を合わせていた。
庵の言葉を信じる事が出来ない自分自身に腹立たしたと、役に立てない非力さが悲しくて、胸の内から込み上がるものを堪える為に目を強く瞑る。
「馬鹿が」
そう言葉を吐き捨てた庵の表情は、呆れと憂いを含み眉根に皺を寄せていた。
桜吹雪に後押しされて腕を伸ばすと、目の前で俯き涙を堪え震えている拳崇の頭を掻き抱く。必然的に抱き寄せる体勢になり、広くある胸元に小さな彼は収まってしまう。
叱られると思っていた拳崇は、優しい抱擁に驚きと動揺に身体を揺らめかせると、堪えていたものが堰を切って溢れ出した。
「お前が傍に居てくれるから、俺は此処に在る事が出来る。少しは自惚れたらどうだ……拳崇」
拳崇の淡い栗色した髪を撫でてやり、彼の中で燻る気持ちに終止符を打った庵は、降り散る桜の花弁を見詰め……口元を綻ばせるのだった。
花に永久を祈る
20100418
自分的設定を久々に。
あんなけ広げて遊ぶ癖に、全く活かせないと言う罠です。
って言うか、脳みそがついて行っていない。
きっと、何処にでもあるお話しだと(設定)思いますが・・・
本人、気に入っていて楽しんでいるので、放置プレイしてやって下さい。苦笑。
口で語れと言われれば幾つでも語れますが、いざ文章にすると無理です。
基本が漫画脳なので、ワンシーン・ワンシーンはナンボでも浮かぶ。
ただ単に、表現力が無いんです・・・改めて思うと痛い痛い。ははは。
そんなこんなで、桜のシーズンにはやっぱり桜の話を書いておこうと、久々にこの二人に登場して頂きました。
長らくお返事もせずままで申し訳ない気持ち満載で・・・ここから失礼致します。
こそりと、この設定を気に入って下さっている方へ・・・捧げたいと思います。
ヘタレな文章で本当にすみません・・・
偉そうな事をしているという自覚はあるのですが、これくらいしか出来ないので、せめてもの気持ちを・・・と思い、記させて頂きました。
体育館は全ての窓と扉が開け放たれ、初夏の緑豊かな風が吹き抜けていた。
誰かが居るはずなのに音の無い事が気になり、たまたま通りかかった俺は中の様子を伺う。すると、開け放たれた扉の近くに一つの影を見つけた。
壁に背中を預け、手足を自由奔放に投げ出した姿で居るのは後輩の成瀬で、近付いてみると、身体を軽く揺らせて眠っている。
「熱心なのは良いが……」
緩急は必要だと教えているにも関わらず、密かに自主練習に取り組んでいた様だった。
今日は、バスケットボール部の活動は無いと昨日の内に伝えていた筈だが、その一日の休みも惜しいのだろう。疲れ眠ってしまうまで成瀬は、身体を苛めていたのだ。
「起きろ、成瀬。汗をかいたままだと風邪を引くぞ」
汗で張りつき鬱陶しくなったのか、着ていたTシャツは脱ぎ捨てられ、首からタオルを掛けただけの素肌を曝して熟睡していた。
風邪を引いては困ると俺は、肩に手を掛け揺すり起こす。しかし、肌を擽る風が心地好いのか、深く、深い眠りの縁にある成瀬は、なかなかと目醒めては来なかった。
「あと五分だけだぞ」
あと五分経てば本格的に起こそうと、それまでは静かに眠らせておこうと、気持ち良さそうに寝息を立てている顔に宣言する。
その声が届いたのか否か、薄く開いた唇が微かに動き、返事をしたように見えた。
仕方ない、と成瀬の横に腰を下ろして時計と睨み合う。
あと少し、もう少しと秒針を眺めていた時、肩にとん、と重みが加わった。
そちらに目をやれば、成瀬の頭が俺の肩に預けられ、柔らかな髪が呼吸に合わせて揺れていた。
ふと、揺れている髪の先を見れば、成瀬の耳から外れたイヤフォンが宙を彷徨っている。
彼の耳に届いているのは、どんな曲なのだろう。
俺は、行き場を無くして彷徨うイヤフォンを手にする。自分の耳元へそれを寄せれば、微かに音が聞こえてきた。
「音楽を聞いている内に、眠ってしまったんだな」
そんな事を思いながら、イヤフォンを耳へと差し込む。シリコンカバーの付いたそれは、耳穴を塞ぐようにして外界の音を遮断し、音楽だけを鼓膜に響かせてきた。
成瀬の性格からすると、アップテンポな物を好んで聞いていると思っていたが、繰り返しイヤフォンから流れている曲は、スローバラードの恋歌だった。
片耳から流れてくる優しい歌声とその歌詞を今、隣で頭を寄せている成瀬と共有していると思えば、幸福感で胸が詰まり自然と笑みが零れていた。
――――この歌詞の様な二人で居られれば良いのに。
五分だけだと言った割りには自分でそれを破り、眠り続ける成瀬と寄り添ったまま歌を聞き続けていた。
優しい音楽
20100408
ちょっと説明足りず感満載ですが、仕事帰りにチマチマ打ち、修正。
まだまだ桜井さんの一方通行、頑張る成瀬は我知らず(笑)
一生懸命に頑張る成瀬の事が大好き……な桜井さんの一人称にへこたれた桜岡でした。
あかん、一人称苦手や(汗)
ちょうど京の誕生日辺りからだと、そして流星群の名前が紅さんの星座だったのでネタにしました。
こんなことをしていて叱られそうなんですが(スミマセン、色々…何も出来てなくて)、リハビリがてらに京誕生日SSです。
まだ、誕生日は続くよ…
アキラ様のネタに、書きかけの桜井さん…先祖帰りしたんでリョーマも付けとけ(笑)
なんだかグタグタ感満載ですが…よろしければ、この下よりどうぞ♪
リハビリにもなってないかも…(涙)
「貴重な時間を、俺に貸してくれないか?」
そう言われ最初は面倒臭いと断っていた京と、なかなかと折れない紅丸は押し問答を暫く続けていた。
どうして今日は、やけに頑ななのだろう。
何時もなら、一度断れば諦めが入るのに……
そんな事を思いながら紅丸の懇願に、ほとほと疲れてきたのか京は、部屋のあちらこちらに視線を外し、上の空になり始める。
と、その時。
目にしたもので彼が、気障な事を始める気なのだと気付く。
だいたい誘い文句からも伺えるが、元々が気障な性分の紅丸なのだから、言葉もすることも何もかもが京にしてみれば、鼻に付くのである。
しかし……
「判ったよ……ったく、くだらねぇトコだったら、二度と付き合わないからな」
愚図っていたが、紅丸の台詞に従うと返事を返した。
その言葉を聞くなり紅丸は、京の腕をしっかりと掴み、逃げ出してしまわないように早速と行動を始める。部屋から連れ出し愛車に押し込むと、何処かへ向かって急発進させたのだった。
部屋から無理やり連れ出され車に押し込まれる迄の京は、握られた腕が痛いと怒鳴り、目の前にある彼の金色した髪を引っ張っり続けていた。
**
「……で、何処へ行く気だ?」
「内緒。あと少しで着くからさ」
京を押し込み車を飛ばし続けていた紅丸は、何処へ向かうのか、何をしようとしているのか……質問する京への答えをはぐらかせ続けていた。
何度となく同じやり取りを繰り返していたが、飽きてきたのかこれ以降、京は口を開くことはなかった。
車中に流れるのはラジオからの音楽とDJのトーク。会話の無くなった2人の間に唯、音を放つだけだった。
運転に集中しながらも紅丸は、バックミラーに映る京の姿を盗み見る。
ウィンドウに肩肘を付き、拗ね膨れた様な顔付きで外の景色を眺めていた。
そんな彼に心中だけで謝り、目的地迄の道程を急ぐのだった。
京の誕生日を迎える時間まで、あと僅か。
それまでには辿り着きたいと紅丸は、アクセルを強く踏み続けた。
**
高速道路を駆けていた車は、山道をひたすらに走り続けていた。
流れて行く景色を見ながら京は、彼の意図に何となく気付き始めていた。
ちら、と腕に留められてる時計を見れば、午前零時を少し回った所だった。
きっと紅丸のことだから内心、残念にしているんだろうな……と思っていた時、車がゆったりとした動きで停車した。
「着いたぜ」
着いたと言われ黙ったまま車を降りた二人は、その外気の冷たさに自身を掻き抱く。
「こんなクソ寒い所まで連れて来るなら、一言いいやがれ!」
ぶるぶる震えている京に、片手を顔の前に立てて紅丸は謝る。
此処は、山の頂上だろうかと思える場所。
余りにも明かりが無く、暗すぎて良く周りが見えていない分、月明かりと星明かりはとても美しく、都会の空の下では見ることが出来ない見事な煌めきだった。
降りた車のボンネットに腰掛けて紅丸は、天上を指差す。
「……ほんっと気障過ぎる」
「良いだろう?きっと京なら判るだろうな……ってね」
「途中まで判ってなかったっつーの。時間……残念だったな」
「それは仕方ないかな。でも、この時を京と一緒に過ごせるのは……凄く嬉しいけどね」
「……るせぇ」
ボンネットに腰掛けている紅丸の横へ、京も腰掛ける。
隣り合わせでいても、互いの顔を見ることは無く、深い夜の空を見上げた。
煌めきながら流れて行く星々の軌道が、そこにはあり物語を紡ぎだす。
吐く息は白く、身体も芯から冷えてきていたが、それをも忘れてしまうくらいに綺麗で、儚くもある流星の群れに目を奪われていた。
「誕生日、おめでとう」
「……」
紅丸は、隣で顔を見られたくないと考えている京へは視線をくれず、天上の星を見つめたままに祝福をする。
改めて祝われるとと恥ずかしくて京は、暗がりである事を幸いに顔を朱色にして言葉を発する事なく頷いた。
しかし、それだけでは礼が伝わらないと、熱を持つ自身の指を、隣に在る大切な人の五指へ、緩やかに穏やかに絡めた。
京は、煌めく流星へ想いを乗せて……紅丸に送り続けるのだった。
星に、想い、乗せて /20091212
時々ネタでスミマセン。
詳しく調べてなくて…な双子座流星群が見れるとのラジオの情報より。
双子座って紅さんの誕生日噛んでるし、今日くらいからその流星群が見え始めるらしいので…ネタネタ!!と食い付いた仕事中←アホか。
紅京だろうが~と、ここで根性出して書かないと勿体ない!!と仕事帰りにガリガリしました(笑)
ちょっとマンガ買い込んで腕が痛かったけど、頑張ったよ!!
間に合ったよ…ほっ。
紅さんもロマンチストだが、京もロマンチスト以外のなにものでも無かろう!と…
京はきっと、流星群の事を知っていたと思う。
多分、高速降りて山道走り出した辺りから気付いたと思う。
と、補足をしてみる。←未熟なり・・・涙。
私、星ネタとか夜空ネタ好きなんで…パターンでも仕方ないかと笑ってやってください。
相変わらずの携帯一発打ちで…詰めが甘かったり云々在ると思いますが、許してやってください。
改めて、京、誕生日おめでとう♪