色々と語っております・・・
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体育館は全ての窓と扉が開け放たれ、初夏の緑豊かな風が吹き抜けていた。
誰かが居るはずなのに音の無い事が気になり、たまたま通りかかった俺は中の様子を伺う。すると、開け放たれた扉の近くに一つの影を見つけた。
壁に背中を預け、手足を自由奔放に投げ出した姿で居るのは後輩の成瀬で、近付いてみると、身体を軽く揺らせて眠っている。
「熱心なのは良いが……」
緩急は必要だと教えているにも関わらず、密かに自主練習に取り組んでいた様だった。
今日は、バスケットボール部の活動は無いと昨日の内に伝えていた筈だが、その一日の休みも惜しいのだろう。疲れ眠ってしまうまで成瀬は、身体を苛めていたのだ。
「起きろ、成瀬。汗をかいたままだと風邪を引くぞ」
汗で張りつき鬱陶しくなったのか、着ていたTシャツは脱ぎ捨てられ、首からタオルを掛けただけの素肌を曝して熟睡していた。
風邪を引いては困ると俺は、肩に手を掛け揺すり起こす。しかし、肌を擽る風が心地好いのか、深く、深い眠りの縁にある成瀬は、なかなかと目醒めては来なかった。
「あと五分だけだぞ」
あと五分経てば本格的に起こそうと、それまでは静かに眠らせておこうと、気持ち良さそうに寝息を立てている顔に宣言する。
その声が届いたのか否か、薄く開いた唇が微かに動き、返事をしたように見えた。
仕方ない、と成瀬の横に腰を下ろして時計と睨み合う。
あと少し、もう少しと秒針を眺めていた時、肩にとん、と重みが加わった。
そちらに目をやれば、成瀬の頭が俺の肩に預けられ、柔らかな髪が呼吸に合わせて揺れていた。
ふと、揺れている髪の先を見れば、成瀬の耳から外れたイヤフォンが宙を彷徨っている。
彼の耳に届いているのは、どんな曲なのだろう。
俺は、行き場を無くして彷徨うイヤフォンを手にする。自分の耳元へそれを寄せれば、微かに音が聞こえてきた。
「音楽を聞いている内に、眠ってしまったんだな」
そんな事を思いながら、イヤフォンを耳へと差し込む。シリコンカバーの付いたそれは、耳穴を塞ぐようにして外界の音を遮断し、音楽だけを鼓膜に響かせてきた。
成瀬の性格からすると、アップテンポな物を好んで聞いていると思っていたが、繰り返しイヤフォンから流れている曲は、スローバラードの恋歌だった。
片耳から流れてくる優しい歌声とその歌詞を今、隣で頭を寄せている成瀬と共有していると思えば、幸福感で胸が詰まり自然と笑みが零れていた。
――――この歌詞の様な二人で居られれば良いのに。
五分だけだと言った割りには自分でそれを破り、眠り続ける成瀬と寄り添ったまま歌を聞き続けていた。
優しい音楽
20100408
ちょっと説明足りず感満載ですが、仕事帰りにチマチマ打ち、修正。
まだまだ桜井さんの一方通行、頑張る成瀬は我知らず(笑)
一生懸命に頑張る成瀬の事が大好き……な桜井さんの一人称にへこたれた桜岡でした。
あかん、一人称苦手や(汗)
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