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あなたの縛られたココロ。
わたしに解く事はできますか?

 




 


今年も、草薙の家の桜は見頃を迎えていた。
風が舞うと花弁は空一面に散り、薄桃色した敷布が波打つように漂う。
花が満開になるのを見計らい、この地に四家を筆頭に縁ある人々を集わせ、園遊と洒落こむのだった。

 

 

「ただの宴会だろうが」

若き八神家次期当主・庵は、その場に飽きたのか人波を擦り抜け逃げ出した。
もとより、家の事もあって無理矢理引っ張って来られていただけなので、飽きたとか言う問題では無かった。
人付き合いの苦手な彼にとって、この様な集会は煩わしいもの。
極力、人目に付かないようにしていたのだが、細身で背丈もあり、何より鮮やかな緋色をした髪が逆に人目を引き付けていた。
話し掛けづらい無愛想な表情で居る庵へ注がれる他者の視線は、彼の苛々を増幅させるには十分だった。
我慢の限界を超えた庵は、黙ったまま庭の奥の奥へと歩いて行き、雲隠れをするのだった。

 

**

 


「……ふん。やっと静かになったか」

広い広い草薙家の庭は、大半が山になっていた。
道無き道を登り続けた庵は、漸く騒めきの無い静かな場所に来たと心の糸を解く。
少しの間だけ許せ、と桜に詫びを入れて庵は、その根元に腰を落ち着かせた。
人心地付けて深呼吸してみれば、薫風が身体の隅々にまで届き疲れを癒してくれる。
見目も華々しい桜の木々は、花弁を散らせて美しい舞を庵だけに披露してくれていた。
穏やかな春の日差しの中で一人、心身共に癒しを受けていたが……
人の気配を感じた庵は、素早く身を起こし闘いの構えを取る。
草薙の結界に護られていると言えど、どこかに綻びが生じていたのかも知れない。

「紛らわしいぞ、拳崇。出て来い」

「ごめん、ごめん!せやけどめっちゃ怖い顔して歩いて行くねんもん……気になるやん」

庵に出て来いと言われてひょこ、と桜と桜の合間から顔を覗かせたのは、椎家の跡継ぎ・拳崇だった。
無愛想にしている庵とは正反対で、何時も幼い顔を笑みで彩っている人だ。
今も、叱られていると言うの拳崇は、頭を掻きながら照れ笑いをしている。
もっとも、庵が本気で怒っているのでは無いと知っているから、何を躊躇う事なく笑っていられるのだ。
腰を据え片足だけをを延ばしている庵の傍へしゃがみ込んだ拳崇は、膝頭で両肘を支えると頬杖を付き、晴天を模した笑顔を浮かべる。

「退屈やったん?」

「愚問だな。それ以外に何がある」

「うーん、思い当たるトコはあんねんけど……」

笑顔から一転、拳崇は少し困った顔をして庵を見つめる。
目まぐるしく表情を変え口籠もる彼に、思い当たる箇所を話せと促した。
これを言えば本気で庵が怒り出しそうだ。
拳崇は、頭の片隅でそう思いながらも、言い出したのは自分だからと腹を括る。






それは無い、と否定の言葉を庵から幾度と聞いていた。
しかし、どうしても信じる事が出来なかった。
好いた人の言葉を素直に聞けない……拳崇の心に影を残す存在の名を口にする。







「この家に……草薙はんの血に縛られて、しんどいんかなぁ……って思ったんや」

言葉を吐くに連れ、徐々に小さくなる声に合わせて拳崇の頭も下へ下へと向かって行き、最後は返される真実(こたえ)が怖くて地面に視線を合わせていた。
庵の言葉を信じる事が出来ない自分自身に腹立たしたと、役に立てない非力さが悲しくて、胸の内から込み上がるものを堪える為に目を強く瞑る。

「馬鹿が」

そう言葉を吐き捨てた庵の表情は、呆れと憂いを含み眉根に皺を寄せていた。
桜吹雪に後押しされて腕を伸ばすと、目の前で俯き涙を堪え震えている拳崇の頭を掻き抱く。必然的に抱き寄せる体勢になり、広くある胸元に小さな彼は収まってしまう。
叱られると思っていた拳崇は、優しい抱擁に驚きと動揺に身体を揺らめかせると、堪えていたものが堰を切って溢れ出した。

「お前が傍に居てくれるから、俺は此処に在る事が出来る。少しは自惚れたらどうだ……拳崇」

拳崇の淡い栗色した髪を撫でてやり、彼の中で燻る気持ちに終止符を打った庵は、降り散る桜の花弁を見詰め……口元を綻ばせるのだった。

 

 

 

花に永久を祈る

20100418

 

 

自分的設定を久々に。
あんなけ広げて遊ぶ癖に、全く活かせないと言う罠です。
って言うか、脳みそがついて行っていない。
きっと、何処にでもあるお話しだと(設定)思いますが・・・
本人、気に入っていて楽しんでいるので、放置プレイしてやって下さい。苦笑。

口で語れと言われれば幾つでも語れますが、いざ文章にすると無理です。
基本が漫画脳なので、ワンシーン・ワンシーンはナンボでも浮かぶ。
ただ単に、表現力が無いんです・・・改めて思うと痛い痛い。ははは。


そんなこんなで、桜のシーズンにはやっぱり桜の話を書いておこうと、久々にこの二人に登場して頂きました。

 

長らくお返事もせずままで申し訳ない気持ち満載で・・・ここから失礼致します。
こそりと、この設定を気に入って下さっている方へ・・・捧げたいと思います。
ヘタレな文章で本当にすみません・・・
偉そうな事をしているという自覚はあるのですが、これくらいしか出来ないので、せめてもの気持ちを・・・と思い、記させて頂きました。

 

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