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寒い寒い校庭を、駆けずり回る成瀬と澤村の様子を見付けた桜井は、講堂に足を向けた。
そこには怒りを露にした小林と、宥めている今川が居た。
他の部員は、触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに練習をしていた。
明らかに外を走っている二人が小林の怒りの原因だと、桜井は苦笑いしながら近付いた。

「皆が若干引き気味だぞ。外の二人は、何を仕出かしたんだ?」

「……言うのも憚られる内容です」

「は?!」

眉間に深すぎる皺を彫っているが、その割りには恥ずかしそうな物言いをする小林に、小首を傾げて頓狂な声を出してしまう。しかし、言わんとする所が桜井も朧気ではあるが、様子で察する。
つい、と小林の傍に寄り、耳打ちをした。

「因みに、最初に吹っ掛けたのは、どっちだ?」

「珍しく成瀬の方から……でした」

「間違っている……いや、まぁ、多分合ってるかな?」

――――したの、しないの、だろ?

桜井の呟きを聞いた瞬間、小林の頭頂部から湯気が立ち上がるのを見た気がした。
やっぱり、と肩を落とした桜井は、口元を隠してまた苦笑いをしてしまう。
笑い事ではないと小林は、真っ赤になりながらも桜井を諫めるのに咳払いを一つした。
どうも成瀬は、他人様の事情とやから気になるらしく、傍にいて尚且つ同じ様な状況下にある澤村が気になるのだった。
澤村も、触れられたくない事情にしつこく食い付いてくる成瀬に腹を立て
、あわや殴り合いにまで発展しかけた所を、小林に雷を落とされたのだった。

「最初……は、どちらだろうな」

「……桜井さんまで、そんな事……え?」

「そう言う事……だ」

桜井の言葉を頭の中で整理してみた小林は、出てきた答えにまた顔を赤くしてしまうのだった。




「さいしょ」
20120524





隣の芝生が気になる……成瀬と、相手が相手だけに触れられたくない澤村でした(笑)

桜井さんが手出しするんだろうなぁ…と思いながら、敢えて出さずにいて頂きました。
小林さんは…澤村曰く、触れないでくれ!だと思います。苦笑。

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