色々と語っております・・・
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これは俺の身勝手で、単なる我が儘だって事、良く判ってる。
だけど、自分一人だけがこんなにドキドキして、欲しい気持ちが止められなくて、どうしようもなくて……桜井さんに当たってしまっている。
擦れ違うだけで、顔を見るだけで、言葉を交わすだけで身体がおかしくなって、気持ちに歯止めが掛けられなくなる。
だから、本当の気持ちを隠して、桜井さんに怒った態度や、拗ねた顔を見せていた。
「こんなの……ダメだよね。ちゃんと話して、迷惑だろうけど聞いて貰って……暫く近付かないで貰おう。そうじゃなきゃ……」
――――もっともっと桜井さんに迷惑、かけてしまう。
俺は、相変わらず偽りの怒りを露にして、桜井さんを誰も居ない教室へ呼び出した。
「成瀬、居るか?」
「……はい。すみません、予備校あるのに……」
「俺も、成瀬に話したい事があったから……予備校なんて今は、どうだって良いよ」
なんだろう……
教室へ入ってきた桜井さんの様子が、何時もと違う。
恐い――――と言うより自分に怒り、そして、少し諦めにも似た表情をして俺のいる場所へと近付いてくる。
ずっと突っぱねて来た筈なのに、そんな桜井さんの口調と顔付きを見た瞬間、眉間に寄せた皺を和らげてしまう。
「久し振りだな、こうして話をするのは」
「そ……そうですね」
「それで、話は……って、成瀬!?」
ダメだ。
やっぱり桜井さんが目の前に居るだけで、緊張して恥ずかしくて、まともに話せない。
だから俺は、言いたい事を態度で示す。
制服の襟を寛げてボタンを一つずつ外し、中に着ていたシャツも何もかもを脱ぎ捨てた。
上半身の肌を晒した姿に桜井さんは目を丸くして驚いている。
寒い冬の、暖房も何もない冷えきった教室の空気は肌を刺し、体温がどんどんと奪われて行くのが判った。
身震いをしても我慢し、桜井さんの目を見据えて、肌と同じように本音も晒す。
「俺……桜井さんの事が、どうしようもないくらい好きです。好きで、好きで――――自分が壊れてしまいそうです」
気を許せば溢れてしまいそうな涙を堪え、言葉を無くしてしまった桜井さんを睨み付ける。
我ながら大胆と言うか、無謀と言うか、バカと言うか。
でも、形振り構っていられないくらい、独り占めしたい人が目の前に居る、居てくれる。
睨んではいるけれど多分、凄味も何もなく、下手をすれば弱そうに見えているかも知れない。
「俺、怒ってるんじゃないんです。こうしていないと、自分が何を口走って、何を仕出かすか怖くて……でも、もう我慢出来なくて――――桜井さんが俺の事、嫌になるかも知れないけど、聞いてください……お願いします、だ……」
いつ泣いてもおかしくない状態で、押し付けにしかならない願いを必死に訴える。
桜井さんは目の前で少し狼狽えていた様に感じたけれど、肝心な事を言葉にしようとした時、眼鏡の奥にある目の色を変え、力一杯抱き締められた。
「すまない、俺が……俺が成瀬を、此処まで追い詰めてしまった。許して欲しい……」
嫌いになんてなる訳が無いだろうと桜井さんは言い、自分の胸元に俺の耳を宛がい、今度は柔らかく抱き締めてくれた。
耳に触れる鼓動の早さは同じくらいのスピードで、自分だけじゃなかったんだと思わず安心してしまい、身体から力が抜けてしまう。
張っていたものが緩むと立っていられなくなり、足元から崩れ落ちる俺をしっかりと桜井さんは抱き留めてくれた。
泣くまいと思っていたけれど、今まで酷い事ばかりをしていたのに優しく、ほんとうに優しい扱いをされてしまい、我慢しきれなくなった。
「怒らせて泣かせてすまなかった。成瀬が一番だから……何があっても俺の一番好きな人だから……」
――――だから、しよう。
掻き抱かれた髪に指を絡ませて、そっと耳元で囁いてくれた言葉は、俺が求めて欲しくて仕方がなかった台詞だった。
桜井さんが気付いてくれていたのが嬉しくて俺は、しっかりとした背中に腕を回して皺が出来るくらいに指を立てた。
「すき」
20120529
長かった。
暫く良い(笑)
最後は、何時もながらに成瀬落ちではございますが、悩める桜井さんが書けて私的には新鮮でした。
まぁ、悩んでんだかどうだか、半分判らなくなってきてましたが…
恥ずかしいからあんまり語れませんが(へたれ)、雰囲気だけでも汲んでいただければ幸いです。
さ、し、す、と続いたサクナル小話でした~
こっから先なんて、私にゃハードル高すぎて無理ですから~(笑)
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