色々と語っております・・・
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一日を明け、どんよりしていたものは雨を呼び、寝覚めの悪い始まりだった。
学校へ行くのが億劫になっている成瀬は、嫌々ながらに身体を起こし、嫌々ながら支度を始める。
本当に気が重い。
昨日は、先輩二人に喧嘩を吹っ掛けてしまっている。
顔を合わせ難い気持ちもあったが、それ以上に皆に避けられている感が否めなくて、学校を休みたかった。
「今日こそは、大丈夫でありますように――――いってきます!!」
逃げ出しちゃ駄目だと自らを鼓舞し、振り切るように大声を出して家を飛び出す。
雨のしとしと降る中、水滴と不安を振り払うように歩き始めた。
早朝練習の為にやって来た体育館で、不安を振り払って来た筈の成瀬は、ショックを受けざるを得ないものを目撃する。
澤村が苦手な桜井と、澤村が好きでなかなか顔を合わせられないでいる小林と、三人顔を付き合わせて話し込んでいたのだ。
何時も遅くやって来るか、早朝練習をボイコットする澤村が居たことにも驚いたが、こんな目立つ所で、ましてや練習に参加する自分が来ることを判っていてやっているのか。
成瀬は、顔を真っ青にして入り口に立ち尽くしてしまう。
思わず、このまま帰ってしまおうかとも考えたが、逃げてしまっては駄目だと思い、何食わぬ顔して練習に混じって行った。
*
「部活の後、ヒマか?」
「……ゴメン、これから用事があるんだ。だから、放課後の練習も出ないよ」
用事も無い癖に嘘を付き、机に散った勉強道具を片付け始める成瀬へ澤村は、思わず手を挙げてしまう。
いきなり殴り付けられた成瀬だったが、今までの鬱積が殴られた痛みより大きすぎて、反応するどころか透かした態度を取った。
それが澤村の癪に触り、胸ぐらを掴み上げ、更に殴ろうと拳を振り上げる。対して成瀬は、好きなようにしろと言わんばかりに抵抗など見せず、顔を背けたままでいた。
クラスの皆は、このままでは二人にとって良くない事だらけだと、必死になって澤村と成瀬を引き離そうとする。
「離しやがれっ!!もう一発ぐらい殴らせろっ!!」
「何があったか知んねぇげど、お前ら仲、良いじゃん!!もう止めとけよ!!」
「……良いよ、もっと殴りなよ」
「あぁ、言った通りにしてやるさ!!」
澤村は、腕に纏わり付いているクラスメートを払い除け、虚ろな目をしている顔面目掛けて拳を振り下ろした刹那、見ていた女の子達の、切羽詰まった声が教室中に響き渡る。
「……すまない、嫌な事をさせたな」
「まさか、アンタが此処に来るとは……ね」
「流石に心配になってね。悪かった」
本当はここまでするつもりが無かった澤村には、わざわざ一年生の教室までやって来た桜井の手が、助け船だった。
成瀬の顔面すれすれの所で拳を止めてくれたのは、桜井の掌。それでも成瀬は、我関せずとした顔付きでいる。
安堵の息を吐いている澤村とクラスメートに目配せすると、そのまま成瀬を引っ張って教室を出ようとした。
「離しっ……離せっ!!」
「訳を説明してやる、来い!!」
あの穏和で知られている桜井が、成瀬に対して怒鳴り、強引な行動に出る。穏やかでない様を見、澤村達は逆に心配をしてしまうのだった。
*
「もっ、もう離しっ……嫌だっ!!」
「いい加減にしないか!!隠し事をして避けていた事は謝る。だが、理由があっての事を判って欲しい」
雨はいつの間にか上がり、水分を多く含んだ重い空気が二人を取り囲む。
成瀬を屋上まで引っ張って来た桜井は、二人きりだという事を確認するように辺りを見回す。
こんな地面の濡れてしまっている屋上には用も無いか、人の姿は見えなかった。
成瀬の両肩に手を置き、体重を掛け逃げられないようにしてしまう。力加減なしに握り、痛みの余りに顔を歪めていた。
それでも力を緩めるつもりのない桜井は、痣になるくらい指を食い込ませる。
「いっ……痛いっ!!」
「判ってくれ、皆を責めないでくれ……成瀬を思っての事だ」
「俺を思って?!そんなの、判るわけ無い……んっ、んーっ!!」
勢い余って強い力で唇がかち合い、成瀬のそれを傷付けてしまった。
じわりと浮いてくる紅いものを桜井は舌先で絡め取り、そのまま唇も撫でて行く。
先程まで盛大に声を張り上げていた成瀬は、一瞬にして静かになり、身体の力が抜けてしまう。
下にはまだ水溜まりがあり、このまま膝を付いてしまえば、制服が汚れてしまうと桜井は、手の中から滑り落ちて行くその身体を抱きか抱えた。
「何……もう、なんなんですか……」
全く判らないと、今にも泣き出してしまいそうな成瀬を、しっかりと抱いて桜井は耳打ちをする。
「今日は何日だ?」
「六月……十五日……」
「俺は先にみずきの家に行っている。皆、そこで待ってい?……だから、絶対に来るんだぞ」
自らが答えた日付に何かが見えた成瀬は、小さな声で桜井に謝る。桜井も、今迄あからさま過ぎたと成瀬に謝る。
まだ、そのままで居たい気持ちは両者ともあったが、溶け合っていた身体を離してしまう。
名残惜しい表情をして桜井を見詰める成瀬をもう一度、腕の中に納めて唇を食む。
「じゃ、また後で」
「……はい」
先に屋上を後にする背中を見送っでいる成瀬の天上には、雲間から零れた光で生まれた虹が浮かび上がっていた。
「にじ」
20120612
もう、これ本にできるよ(笑)
前の「な」から続いた成瀬誕生日話。
ヲチどないすんねん、どないしよ~汗。
若干?矛盾が生じてるんですが、その辺りは酷い書き手の桜岡の事……目を瞑ってやってください←をい!!
桜井さんや、皆の意を汲んで芝居ベタな成瀬は、頑張るんだろうな……と思います。
(多分、仕組んだ皆さんは、桜井さんが喋るだろうとは予測済みでしょうが(笑))
長々となってしまいましたが、一応、成瀬誕生日祝いでございました。
どっかで続きが出てきたら、笑ってください(;^_^A
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