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(うわぁ、空が真っ青だ!!)

今日は天気が良いと、教室の窓からずっと外を眺めていた成瀬は、午後から授業が無いことを理由に、桜井を屋上へと誘った。
勿論、断る理由など何処にもない桜井は、そこで一緒に昼食を取ろうと提案する。
同じく、断る理由など何処にもない成瀬は、二つ返事で返した。



放課後になり、仲良く連れ立って屋上に通じる鉄の扉を開く。すると、教室の窓から見ているよりも、ずっとずっと大きな青空が二人の視界に広がる。
暑くもなく寒くもなく、頬を撫でて行く風は麗らかな春日を届けてくれた。
清々しい水色を見上げ、大きな伸びをして身体を解放し、深呼吸して薫風を思いきり吸い込んだ。
やり過ぎたか成瀬は噎せてしまい、桜井が背中を擦りながら笑いを堪えていた。
膨れっ面をしても唯、可愛らしいだけだと思っている桜井の頬は緩みっぱなしでいて、成瀬はそれが気に入らず緩んでいるものを引っ張った。
痛くもない癖に痛いと言い、困った表情をしても結局は可愛くて仕方なくて、緩みきっている桜井だった。


「……やってらんねー。俺が居ること知っててやってるだろ、黒幕さんよ」

「……え?!」

「居たのか、澤村?」

「ふざけんなっつーの。白々しいったらありゃしねぇ」

日陰にいた澤村は小さな掛け声を出し、冷えたコンクリートの上へ横たえていた身体を起こした。
砂ぼこりを軽く払い、ズボンのポケットに両手を突っ込み近付いてくる。
忌々しそうに睨む澤村を、笑顔絶やさず対峙する桜井と、よもやの遭遇に身体を小さくしている成瀬だった。
じりじりと間合いを詰めてくる澤村の凄味が怖くて、苛められると逃げる成瀬は桜井の背中側へ回り、顔を覗かせる。
板挟みされ、さてどうして二人を止めようかと桜井が思案していると、先程、自分達が潜り抜けてきた鉄の扉が開いた。

「――――あ」

「……タイミング悪っ!」

「なーんだ、一緒じゃないか」

「澤村、土曜の放課後いなくなると思ったら……此処でご飯、食べてたんだ」

―――――小林さんと一緒に。

先程まで怯えて隠れていた成瀬は、顔色を一転させる。今度は逆に、澤村を肘でつついてしたり顔をした。
そんな事をするとあとが怖いぞ、と思いながらも桜井は止めもせず、扉を開けたまま硬直している小林を手招きする。
ばつが悪そうに顔を背けていた小林も、手に提げているものを見られては逃げられないと腹を括り、三人に近付いてきた。

「これから食事か?」

「はぁ……まぁ」

「俺達もそうなんだ。良かったら一緒にしないか?」

にこやかに柔らかく話しているが、目は逃がさないぞと語る桜井には逆らえず小林は、三人の元へと近付いた。
澤村も小林も、成瀬にしても一番怖いのは絶対に『この男だ』と思っている桜井の指令であれば、折れる他なかった。




「こーんなにいい天気で、みんな一緒にご飯食べるのって、良いですよねっ」

「そうだな。二人の邪魔をしてしまったけど、たまには良いかな」

「とか言いながらアンタ、次も狙ってくるつもりだろう……」

「…………」

能天気な成瀬と黒幕の桜井には、小林も澤村もお手上げだと愚痴るも内心、こんな昼下がりも良いものかと感じる。
同じ境遇で仲間でいる四人は青空の下、和気あいあいと食事をし……何時の間にか横並びで眠り込んでしまうのだった。






部活に大遅刻した面々は、これまた仲良く罰を受けたのであった。





「そら」
20120531






ちょっと急いじゃいましたが、今月最後の小話。
きり良くしたかったので、サ行まで頑張りました。



金北戦前のトライアングル対策の話にて。
成瀬を中心にして敵として戦った面々が集まり、手を貸してくれる…ってのから、この話を思い付きました。


なんやかんや言っても仲良しでいて欲しい、コバサワ+サクナルさんでした☆

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