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「くそっ」

「……すまん」

「アンタが悪いんじゃねぇって!あのジジイが……あーっ、ムカつくっ!!」

初心者だと知っているのに容赦なく竹刀を振るわれた澤村は、あちこちに青あざを作っていた。
小林の様に袴に上掛けと言う姿ではなく、がっちりと身を防具で固めていても、この有り様である。
どれだけ師範に良いようにされたのか、一目で判る。
道場に使いで来た時点で予測はしていたが、何時もより激しい仕打ちに澤村は少し憤慨した。

「で、あのジジイはご機嫌でメシ食ってる訳か」

「そう言うな。師範も悪気がある訳じゃないんだ」

「わーってる、わーってるって。それより腹減った……早く帰ろうぜ」

朝方から呼び出され、締め上げられた小林が解放されたのは、真上にいるお天道様が少し傾きかけた頃だった。
下町の風情が漂う道場の、庭先にある水場で汗を流そうとやって来た二人。
素足のサンダル履きの澤村は、天気も良いことだからと頭から水を被り、きらきらとした水玉を振り撒いていた。
袴に上掛け姿の小林は両腕を抜き、上半身だけを陽のもとに晒した。
手拭いを水に浸し軽く絞ると、肌に浮き上がっている汗を丁寧に拭いていた。

「……中途半端に脱いでる方が、エロいかも」

ぼそ、と呟いた澤村の言葉が耳に入ったか小林は、物凄い剣幕で睨み付ける。
ただし、顔は真っ赤にして凄味も何も伝わらなかった。
にやにやしている顔を見ないように背けると、無言で身を清めていく小林だった。

「背中だけじゃねぇけど、アンタの事……」

――――好きだ。
再びぼそ、と呟いた澤村は、綺麗に鍛え上がった小林の背中に触れ、頬を擦り寄せた。




小林に負けないくらい、顔を真っ赤にして……




「せなか」
20120530




だからね、私が書くと何でか逆ニュアンスになるんだよ(T.T)

ちょっと前のお話からの続き。
コバの背中って凄い綺麗そうやな~と勝手に思ったのでした。

成瀬や桜井さんみたいに面と向かって「好き」とか言えない人々だから、何かにつけて言わせてみました(笑)



澤村がエロいとか言うと、マジでエロさが倍増しそうだと今更ながらに気付いてしまった桜岡でした。
もう言わせない(笑)

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