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一日を明け、どんよりしていたものは雨を呼び、寝覚めの悪い始まりだった。
学校へ行くのが億劫になっている成瀬は、嫌々ながらに身体を起こし、嫌々ながら支度を始める。
本当に気が重い。
昨日は、先輩二人に喧嘩を吹っ掛けてしまっている。
顔を合わせ難い気持ちもあったが、それ以上に皆に避けられている感が否めなくて、学校を休みたかった。

「今日こそは、大丈夫でありますように――――いってきます!!」

逃げ出しちゃ駄目だと自らを鼓舞し、振り切るように大声を出して家を飛び出す。
雨のしとしと降る中、水滴と不安を振り払うように歩き始めた。







早朝練習の為にやって来た体育館で、不安を振り払って来た筈の成瀬は、ショックを受けざるを得ないものを目撃する。
澤村が苦手な桜井と、澤村が好きでなかなか顔を合わせられないでいる小林と、三人顔を付き合わせて話し込んでいたのだ。
何時も遅くやって来るか、早朝練習をボイコットする澤村が居たことにも驚いたが、こんな目立つ所で、ましてや練習に参加する自分が来ることを判っていてやっているのか。
成瀬は、顔を真っ青にして入り口に立ち尽くしてしまう。
思わず、このまま帰ってしまおうかとも考えたが、逃げてしまっては駄目だと思い、何食わぬ顔して練習に混じって行った。






「部活の後、ヒマか?」

「……ゴメン、これから用事があるんだ。だから、放課後の練習も出ないよ」

用事も無い癖に嘘を付き、机に散った勉強道具を片付け始める成瀬へ澤村は、思わず手を挙げてしまう。
いきなり殴り付けられた成瀬だったが、今までの鬱積が殴られた痛みより大きすぎて、反応するどころか透かした態度を取った。
それが澤村の癪に触り、胸ぐらを掴み上げ、更に殴ろうと拳を振り上げる。対して成瀬は、好きなようにしろと言わんばかりに抵抗など見せず、顔を背けたままでいた。
クラスの皆は、このままでは二人にとって良くない事だらけだと、必死になって澤村と成瀬を引き離そうとする。

「離しやがれっ!!もう一発ぐらい殴らせろっ!!」

「何があったか知んねぇげど、お前ら仲、良いじゃん!!もう止めとけよ!!」

「……良いよ、もっと殴りなよ」

「あぁ、言った通りにしてやるさ!!」

澤村は、腕に纏わり付いているクラスメートを払い除け、虚ろな目をしている顔面目掛けて拳を振り下ろした刹那、見ていた女の子達の、切羽詰まった声が教室中に響き渡る。

「……すまない、嫌な事をさせたな」

「まさか、アンタが此処に来るとは……ね」

「流石に心配になってね。悪かった」

本当はここまでするつもりが無かった澤村には、わざわざ一年生の教室までやって来た桜井の手が、助け船だった。
成瀬の顔面すれすれの所で拳を止めてくれたのは、桜井の掌。それでも成瀬は、我関せずとした顔付きでいる。
安堵の息を吐いている澤村とクラスメートに目配せすると、そのまま成瀬を引っ張って教室を出ようとした。

「離しっ……離せっ!!」

「訳を説明してやる、来い!!」

あの穏和で知られている桜井が、成瀬に対して怒鳴り、強引な行動に出る。穏やかでない様を見、澤村達は逆に心配をしてしまうのだった。







「もっ、もう離しっ……嫌だっ!!」

「いい加減にしないか!!隠し事をして避けていた事は謝る。だが、理由があっての事を判って欲しい」

雨はいつの間にか上がり、水分を多く含んだ重い空気が二人を取り囲む。
成瀬を屋上まで引っ張って来た桜井は、二人きりだという事を確認するように辺りを見回す。
こんな地面の濡れてしまっている屋上には用も無いか、人の姿は見えなかった。
成瀬の両肩に手を置き、体重を掛け逃げられないようにしてしまう。力加減なしに握り、痛みの余りに顔を歪めていた。
それでも力を緩めるつもりのない桜井は、痣になるくらい指を食い込ませる。

「いっ……痛いっ!!」

「判ってくれ、皆を責めないでくれ……成瀬を思っての事だ」

「俺を思って?!そんなの、判るわけ無い……んっ、んーっ!!」

勢い余って強い力で唇がかち合い、成瀬のそれを傷付けてしまった。
じわりと浮いてくる紅いものを桜井は舌先で絡め取り、そのまま唇も撫でて行く。
先程まで盛大に声を張り上げていた成瀬は、一瞬にして静かになり、身体の力が抜けてしまう。
下にはまだ水溜まりがあり、このまま膝を付いてしまえば、制服が汚れてしまうと桜井は、手の中から滑り落ちて行くその身体を抱きか抱えた。

「何……もう、なんなんですか……」

全く判らないと、今にも泣き出してしまいそうな成瀬を、しっかりと抱いて桜井は耳打ちをする。

「今日は何日だ?」

「六月……十五日……」

「俺は先にみずきの家に行っている。皆、そこで待ってい?……だから、絶対に来るんだぞ」

自らが答えた日付に何かが見えた成瀬は、小さな声で桜井に謝る。桜井も、今迄あからさま過ぎたと成瀬に謝る。
まだ、そのままで居たい気持ちは両者ともあったが、溶け合っていた身体を離してしまう。
名残惜しい表情をして桜井を見詰める成瀬をもう一度、腕の中に納めて唇を食む。

「じゃ、また後で」

「……はい」

先に屋上を後にする背中を見送っでいる成瀬の天上には、雲間から零れた光で生まれた虹が浮かび上がっていた。




「にじ」
20120612




もう、これ本にできるよ(笑)
前の「な」から続いた成瀬誕生日話。

ヲチどないすんねん、どないしよ~汗。

若干?矛盾が生じてるんですが、その辺りは酷い書き手の桜岡の事……目を瞑ってやってください←をい!!




桜井さんや、皆の意を汲んで芝居ベタな成瀬は、頑張るんだろうな……と思います。
(多分、仕組んだ皆さんは、桜井さんが喋るだろうとは予測済みでしょうが(笑))




長々となってしまいましたが、一応、成瀬誕生日祝いでございました。
どっかで続きが出てきたら、笑ってください(;^_^A

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さっき夕食の買い物から帰宅。
親父さんがジムから帰宅していて、自分用のご飯を渡したので(巻き寿司一本(笑))、今から早いけどオヤツtime…

なんじゃ?!な取り合わせですが、ドロリッチ大好きやし、ベジップスは一回食べたらハマりました。
容量少ないのが残念です。



昨日、夜中に遅々としているバサラ3、権現様一周目修了。
ソフトの発売や、PS3を買った日付とか考えたらかなり放置した期間がありましたけど、最近少し時間が出来るときはチマチマやっています。

天明ルート…ちょっと最後が切なくて、泣きそうになりました。夜中にやるのは辛かった。
やっと素手で戦う権現様、慣れてきたんで暫く頑張ってみます。


政宗さまルートに疲れたんで…(笑)←何回やっても幸村にたどり着けない(T.T)シナリオない?あるよね??






……皆が、俺を避けている。

この梅雨に突入したじめじめとした時に、更にじめじめとした事態に成瀬は陥っていた。
最初は忙しいだけだろうと思っていたが、スクラッチの面々はともかく、桜井や小林まで余所余所しい素振りをし始めたのだ。
自分が気付かぬ内に、何かを仕出かしていたのだろうか。
日頃、能天気な成瀬も流石に悩まざるを得ない、皆の避けっぷりであった。



そんな、ある日。
ずっと一人取り残されていた成瀬は、桜井と偶然部室で一緒になり、思い切って話し掛けてみた。
話し掛けること自体も、凄く久し振りの様な感じで、想いを通わせていても遠くに思えた人だった。

「桜井さん、話、聞いて貰えますか?」

「どうしたんだ一体。そんなに改まって……らしくないなぁ」

らしくなくさせているのはあなた達でしょう、と口を滑らせそうになるも堪え、出来るだけ平静を装い端的に質問する。

「俺の事、避けてませんか?」

「何を言い出すかと思ったら……ある訳ないだろう?成瀬が嫌いなら俺は今、こうして一緒に居ないさ」

にこやかに返答はするものの、視線と気持ちは上の空。いつも目を見て話す桜井のそれは泳いでいて、余所余所しい雰囲気満載だった。

「もう良いですっ!!お疲れ様ですっ!!」

両肘を付けている机を思いきり叩いて成瀬は怒鳴り、荒々しい所作でバックを方から担ぐと、部室のドアを開け放った。
大きな音をさせて開け放ったまま出て行くその背中を桜井は、唯、言葉なく見送る。
追い掛けたくとも、追い掛けられない事情がある。
その事情の一部始終を知る小林が、開け放たれたドアの向こう側にいた。

「お疲れ様でしたっ!」

あなたもグルなんでしょう?と言う強い視線で睨み付けた成瀬は、呆気に取られている小林に無理から挨拶をして帰って行った。

「相当、怒ってますね」

「俺も上手く自分を偽れなくてね……」

「桜井さんでも成瀬に掛かれば、無理でしょう?」

「正直、きついな。でも明日になれば……誤解が解けるだろうと、思いたい」

桜井は、付いた両肘の内側へ頭を潜り込ませ、盛大な溜め息を零した。
小林も、相当参っている桜井に大丈夫ですやよ、と言葉を掛ける。
明日は、成瀬の誕生日。
仲間達からのサプライズ祝いのために、皆で避けた素振りをして見せていたのであった。




「なかま」
20120609




すみません、ちょっと疲れた(;^_^A
友達、仲間に祝われる誕生日も嬉しいけど、やっぱ一番は桜井さんのお祝いだよね~


今朝、仕事へ向かう地下鉄の車内で、半分寝ながらこの続きを本で出そうかどうしようか…と思ったんで、ここで止めました。

絶対長くなるし、出来れば小話の「しよう」を踏まえて書きたいかな?と自問自答してます。

しよう、はまず無理だろうけど、ちょいとチャレンジャー精神が芽生えた桜岡でした←ヘタレやから一週間じゃ無理です。苦笑。




液晶を
見れば画面を
タッチする



二三日前に仕事場のファックスコピーが新しくなったんです。
もー使いにくいったらありゃしない(笑)
でも今までのものより画質きれいし、早いからなぁ…慣れよね、慣れ。

で。
我輩がスマホにしたのも原因があるんですが、ついファックスコピーの液晶ディスプレイに出てるガイド文字を…タッチしてしまうのであった。

昨日あたりから何回かやっていて、セルフ突っ込み「ちゃうやろ、ぼけ」とやっております(笑)



今、仕事中なんですが(土曜は基本マッタリ)、ついやっちまった~んで一句、読んでみました(*^.^*)





夏を過ぎ、もうすぐ初秋を迎えようとしていた。
まだ日中は、茹だるような暑さに見舞われる時もあったが、日暮れが訪れると途端に気温が落ちる。
半袖でも寒くはないが、蒸し暑さが無くなり、過ごしやすくなった。




「それじゃ」

「今日は、これからバイトかい?」

「いえ、違いますけど……」

小林の家の手伝いを終え帰ろうとしていると、声を掛けられた。
店先で振り返った澤村の目に映るは、弁慶の姿だった。
風呂敷包みを手に、大きな身体を少し屈めて穏やかに笑っている。

「良かったら食べてくれないか?作り過ぎてしまったんだ」

と言う弁慶だが、これは確信犯だと判っていた。

何時も手伝いの後、食事を出して貰うのだが、そう度々も申し訳ないと今日は早々に帰ろう考えていた。それを実行に移した澤村だったが、弁慶の方が上手でいて風呂敷を握らされてしまうのだった。

「何時も悪いっす」

「手伝いをしてくれているのだから、これくらいはさせて欲しい」

「でも……迷惑じゃ無いっすか?」

澤村の、暑いからと上げられている前髪へ、弁慶は手を伸ばす。
他の誰かがしようものならば、蹴りの一発くらいは確実に飛ぶだろう。しかし澤村は、くすぐったくはあったが、弁慶の大きな手を素直に受け入れた。
黒くしなやかな髪の毛を撫でられると、弁慶の持つ暖かさが伝わって来る。

「遠慮は無用。口に合うか判らないが、食べてくれれば嬉しい」

「いっつも美味い飯、食わせて貰ってます……じゃ、帰って頂きます」

頭を軽く下げた澤村は、弁慶に別れを告げて店を後にした。







ペタペタと軽いサンダルの音をさせて歩いている澤村に、ガタガタと鳴いている古めかしい自転車が近付いて来た。
思いきり握り混んだブレーキは、物凄い音を立ててタイヤの動きを止めた。

「……お前、これから帰るだけなのか?」

「あぁ。アンタの兄さんから弁当持たせて貰ったし、帰って食うだけだけど……」

「なら、少し時間をくれないか?」

「別に構わねぇけど、何かあんのか?」

店の配達で使っている自転車を漕いで追いかけて来たのは、さっきまで話していた弁慶の弟・純直だった。
ティーシャツにジーンズ、足元は『ジャパニーズサンダル』とでも言うべきか、雪駄を履いていた。

「もし良ければ……その、何だ……あの……」

部活中、容赦なく檄を飛ばす口調は何処へやら。小林は口籠り、続く言葉が出てこない。否、出せずにいた。
皆目見当の付かない澤村は、焦れったい小林を思いきり蹴り飛ばそうとした時、息が止まるかと思う事を口にしたのだ。

「川辺の風が気持ち良いんだ。一緒に行かないか?」

デートとは言えない堅物の小林の、精一杯の誘い文句だった。
澤村は、すぐにその言葉の意味するものが理解できなかったが、弾き出した答えに狼狽え、紅くなる。そして、小林の顔を真っ向から見れず、背けてしまう。
澤村の行動を、これまた紅くなっている小林は見詰めていたが、顔を反らされた事に落胆する。

「わ、悪い……聞かなかった事に……」

「――――出来るか、バカヤロー!!責任取れっ!!」

早々に引き上げようと負けを確信した小林が自転車を漕ぎ出そうとしていると、澤村は怒声を上げ荷台に飛び乗ってきた。その上に立ち、運転者の首に腕をしっかりと巻き付け、しがみついた。

「はっ、早く行けよ!!恥ずかしいだろっ!!」

「――――あっ、ああ」

鼓動の高鳴りを響かせている小林の背中と、澤村の胸がぴたりと重なり合う。
しがみつかれている小林は、もう少し腕の力を緩めて欲しいとは言わず、川辺を目指してペダルを力一杯踏み込んだ。




「とおく」
20120607





遠くまで二人でデートして欲しいなぁ~と思いを込めて。
昔々、自転車に乗っている二人を書きましたが、展開は似てるはずです(笑)
立ってるか、座ってるか位の差ですが…今の桜岡の書く話、として受け止めて頂ければ幸いです。


あ~恥ずかしい。


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