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「花組の皆さんは良いなぁ~舞台では美しく可憐であり、凛々しく降魔共に戦いを挑む。羨ましいぞ、大神ぃ」

「……な、何で加山が此所に居るっ!」

己の所為で副司令を喪い、行方不明となっている司令より代行を言付かった大神に、帝国華撃団・花組の面々は心添わせていた。
叱咤され、励まされ、花組の皆がもり立ててくれている所に突如、男が降って湧いてきたのだ。
この加山と呼ばれた男、大神が同期であると皆に説明するも、何故此所に居るのだろうかと首を捻る。

「大神の同期であり、帝国華撃団・月組隊長の任に着いている加山です。我々は、今をもって大神司令代行の下に付き、引き継ぎ支援する所存……皆さん、宜しく」

真白なスーツを身に纏った加山は、花組の面々を見、敬礼をする。それを受けて敬礼を返されて頷き、今後の事を、今は言えないが奔走している司令の事などを口にし始めていた。
大神は、それを遠くで起きているように、心此所に非ずで耳にしていた。
久々に聞く同期の声色に、遥か昔、士官学校の頃の事を思い出していた。

「大神さんっ、大神さんっ! 大丈夫ですか? まだお辛いですか?」

「……あ、すまない。大丈夫……大丈夫だから」

「でわ、加山さんのお言葉に甘えて、私達は一度、部屋に戻ります。隊長の事、お願いします」

「了解しました。これから何時いかなる時でも、戦いに身を投じなければならなくなるでしょう。花組の皆さんが頼りです……副司令の事もありますが、今は体をしっかり休めてください」

皆、心配して後ろを振り返りつつ部屋を後にし、残されたのは大丈夫だと虚勢を張るも顔色を無くしたままの大神と、目の前の椅子に腰を降ろし暫くその様子を見詰めていた、加山のみとなった。





大神がこの任務に就いた日よりも前に、隠密部隊の月組に身を投じていたのだと加山は、飄々とした口調は封印し、ある程度かい摘んで簡潔に話した。
副司令の事にも触れた瞬間、動揺する大神の頬を両手て挟み込み、肌を軽く張る。
驚いて目を見開いている大神に、その生かされた命を大切に、この帝都を護り、人々を護り報えと解く。

「己を見失うな、大神……辛いのは判るが今、お前だけが頼りなんだ。一人で抱え込むな……何の為に俺が此所に居るか、判るだろう?」

――――何かあれば話せ、頼ってくれ、お前を絶対に助けてやる。

冷えきった大神の頬に、加山は熱を分け与える。ゆるりとその手を滑らせれば、頼りなく沈んだ瞳に少しだけ彩(いろ)が戻る。
だらリと下がっていた手を持ち上げて大神は、加山のそれに静かに重ね合わせた。

「お前が居てくれて……良かった……」

それだけ言葉を発すると、気持ちを昇華させる様にひとつ、涙を落とした。




空に舞う細く薄い月が、その様子を見ていた。



月だけが見ている
20150711





漫画版第二部、5巻より。
初めて書きました、サクラ大戦、月花。
10年くらい前にはまって、現在先祖帰り中。

漫画版が面白くて、面白くて。
当時も読んでましたが手放し、最近まとめ買いして一気読み。


頼られる側の大神が、唯一頼れるのが突如現れた加山じゃなかろうか?と思い、書きなぐってみました。苦笑。



駄文ではございますが、お付き合いのほど、ありがとうございました。
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