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――――何を真面目に部活、やってんだ俺。

暑くて、熱くて、動く事を放棄しそうな足で澤村は、必死にゴールを目指す。
こんなこと、腹が減るだけで金にもならないし、
自分へのメリットはなにも無い。あったにすれば、無駄な体力が付くくらいだ。
それはそれで、常にコートを走り回るバスケットマンには良いことだが、楽して勝つタイプの澤村は似合わないものだった。
家庭の事情もあり、部活動は『出来うる限り』の許しを貰っていたが、たまのサボりはあるにせよ、何故か稼ぎ時の夏休みですら出てきて参加している。
部を引退してる癖に体力作りだとかでやって来る桜井と、『桜井さん大好き』な成瀬のバカップルに巻き込まれている節も少々あるが、澤村の心に何時の間にか入り込んでしまった『誰かさん』が気掛かりで、来ている部分が多いに占めていた。

それを認めたくない澤村は、仕方無しに部活を真面目にやってやっている――――と、恩着せがましく愚痴るのである。







「……澤村、見ませんでしたか?」

「さあ。成瀬、知っているか?」

「う~ん……ランから帰って来てからは見てないですけど。今月もバイト代がどうこうって言っていたから、多分、屋上辺りで寝てるかも……」

桜井と成瀬の答えに頭を下げた小林は、そのまま行き過ぎようとしていた。
聞いた割には屋上へ行く気配を見せない男を、桜井は腕を掴んで引き留め、成瀬はその手に紙袋を掛けた。

「ほら心配なら素直になる。手に持ってる包み、弁当だろ?」

「これも澤村にお願いします!!母さんが『澤村君に渡して』って言っていたんで」

「桜井さん、これは違います!成瀬も自分で持って行け!」

「嫌です、邪魔したくないですから!」

この二人に聞いたのは間違いだったか、と思うも、この二人にしか聞けないことであるのも十分承知している。
小林は、擦り付けられた紙袋と、桜井の指摘通りの弁当を手に、居るであろうと言われた屋上へと向かった。






(腹が立つが……流石だな)

小林の探していた澤村は、太陽の照りつける校舎屋上の、うまい具合に日陰になっているコンクリートの上に寝転がっていた。
頭もとには、ほとんど空に近いペットボトルが置かれていた。表面についていただろう水滴も乾いてしまい、冷たさは微塵も感じられなかった。
起こして食べさせるのが全うかとも思ったが、澤村は気持ち良さそうに、傍にある存在にも気付かずに眠っている。そのままにしておこうと小林は、渡された紙袋と、自分の作った弁当の包みをそっ、と置いた。

「部活に出てきてくれて、ありがとう」

穏やかにしていた寝顔が、小林の言葉に反応したか否か。さらに蕩けた表情をした澤村に一瞬息を詰めてしまい、声を出してしまわない様に口元を手のひらで覆う。
このまま見ているのは目の毒だと小林はくるり背を向け、振り返ることなく屋上から退散したのであった。








「起こせ、ばかやろう……」
振り返りもしない小林の背中を澤村は、片目を開いて見詰めて、ぼやいた。
しかし言葉とは裏腹に、目元を紅に染め、口元を緩めていたが……









ブキヨウナヒトビト
20130825





少しフライングですが、澤村…ハピバ♪
同じような話が、書いた中のどこぞにあったような~と思いつつ、すみません、上げてしまいました。


ちゃんと誰が誰の弁当でってことは判っている澤村は、しっかり食べて、入れ物は洗って返却しました、とさ。
小林さんには、オプション付きで……もちろん☆

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