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北海道へ行っていた澤村が今日、東京へ戻って来る筈だった。しかし、天候悪化で便が減少し、戻れるかどうか判らないと連絡が入ってきていた。

(少し前まで桜井さんと成瀬が一緒に居てくれたが……)

もしかすると帰れないかもとの連絡を話し、先に帰って貰った。
このまま待っていても、空振りをする可能性もある。それに二人が帰る最終列車の時間もある。

「小林は、待つのか?」

「……はい。空振りかも知れませんが、最終便まで待ちます」

「じゃ、俺達も……」

「成瀬、温かいお茶を買ってきてくれないか?」

「は、はいっ」

突然、澤村を待つ話をしていたのに、桜井に全く違う話を振られ驚いたが、先輩の言う事は絶対で、成瀬は近くの売店へと走っていった。

「大丈夫か? 小林が、帰れなくなるぞ」

「調べましたら此処は、場所によって二十四時間使える施設があるみたいですし、もしアイツが帰って来た時、飛行機から降りて来た時に……一人だと可哀想かと思いますし」

「素直に『一番に会いたい』で良いんじゃないか? それじゃ俺達は帰るよ。これで少しは暖を取れ」

「あ、ありがとうございます……桜井さん。成瀬も気をつけて帰れよ」

「えっ、えっ? 桜井さん帰るんですか?」

「成瀬も一緒に帰るんだ……二人の邪魔しちゃ悪いだろう?」

成瀬の買ってきた飲み物を小林へ渡し、邪魔者は帰るよと可愛い後輩を引っ張り、桜井は空港を後にした。




桜井の一言は図星で、真っ赤になりながらガラス越しに飛行機の離発着を見詰める。
色彩鮮やかなライティングをし、大きな機体が空を駆ける。
外はかなり冷えているのか、触れたガラスが冷たく、息も時間が経つに連れて白くなって行く。
奥に入っていれば暖房も充分効いているのに、小林は空を駆ける機体を見詰め、何処からの来たものか、澤村が乗っているのかを思い描いていた。

『まもなく……の最終便が……』

場内アナウンスが耳に届いた小林は、弾かれた様に顔を上げた。
桜井が渡してくれた茶は、とうの昔に冷たくなっていて、幾時待っているのか判らなくなっていた。

「これに乗っていなければ、施設へ移動する……」

「かっ、かさはりっ!」

回りには最終便を待つ人々が数人居たが、お構い無しに背中から抱き付き、謝り続ける澤村の声が聞こえた。

「待っていてくれたのか? 連絡したじゃん……乗れないかもって」

「桜井さんや成瀬も居たが、先に帰って貰った。今日、お前が帰って来た時に誰かが居なければ寂しい……いや、俺が逢いたくて待っていた」

思いきり抱き付かれ、腰の辺りを強く締め付けられて苦しかったが、それだけ澤村も逢いたかったと思っていたのだと感じる。

「お帰り、澤村。逢いたかった……」

「ただいま、小林。俺も逢いたかった……」

未だ顔見ぬままの挨拶ではあるが、二人の間には愛がたくさん零れ落ちていた。



おかえり、ただいま。
20170120


フライング小林誕生日祝いです!
実は、ずっと持っていたネタで、やっと書きました……ごめんなさい!
短い話ですが、男前な小林さんが出ていれば、伝われば嬉しいです!


このあと、二十四時間使える施設で隣同士で座って、肩寄せ合って翌朝まで過ごす二人でした(照)



駄文ですが、お付き合い頂き、ありがとうございました!
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