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正博は、水平線の彼方より昇り来る、太陽の輝きに目を細める。
目映さの中にある、暖かさと優しさに包まれていた。
安心する反面、不安も心を過る。



幼い頃に、この海岸に流れ着いていたのを助けられた。
助けた人間は、この国の長(おさ)だった。
目を覚ました時は、自分の名前が(正博)だと言うこと以外、全ての記憶を失っていた。
見慣れない土地、見慣れない場所、見慣れない人々。
怯え、狂乱する正博を長は傍に置き、物事を一から十、更には百まで教え説き、今ではこの国の要ともなる人物になっていた。
何処の者とも判らぬものを国宮に、まして要に据えるとはと反論されたが長は取り合わなかった。正博の頭の良さと人となりを汲んで推したのだと、喧しい家臣達を説き伏せた。まだ年若い正博だったが実際、彼に勝てる者はおらず、家臣達は認めざるを得なかったのだが……

今では長は、老齢とは行かなくても年を取った等と言い、家長を息子達に譲り、呑気に隠居生活をしていた。





器の大きな人物に拾われたこそ、自分は今、生きていられるのだと。
ここに立ち、流れてきたと思わしき海を見詰められるのは、長のお陰だと正博はこの太陽に祈りを捧ぐ。
なかなかと戻らぬ記憶に苛立ちはするが、このまま知らずに此処で生を全うしたいとも思うのであった。

短く整えられた漆黒の髪と、身に纏う真綿色した衣は潮風に揺れ、細く儚くある正博もまた、潮風に揺れていた。







「……あっ……っ!!」

と、その時。
正博の首もとを彩る藍色したストールが、海からの強い風にさらわれ、空を舞った。
咄嗟に手を伸ばしたが届かず、それは海の彼方へと連れ去られてしまった。
――――大切なものなのに!!

正博は、そう叫ぶ前に海へと足を踏み入れ、取りに行こうとした。しかし強い力で腕を引かれ、前には進めなかった。そうしているうちに、藍色のストールは、沖へ沖へと流され、もう見えなくなってしまった。

「危ないだろう」

「……でも、あれは……」

「良い。ああいう物は、買えるが……お前は、お前だけだ。正博が、海に入った瞬間、消えてしまいそうで……」

―――――俺は怖い。
そう言った人は、正博の身体を背から抱き締める。そして、遠くへ行ってしまわない様に腕の力を強め、更に抱き締めるのだった。




朝の海
20130908






サクナルのなんちゃって主従話の、コバサワ版。

出している本ではサクナルばかりですが、隣国の長が小林長男、次男は補佐で、その次男に付いてるのが澤村、な図式。


どっか…ネットにあげてたかな?
コバが、自分と現長の兄ちゃん比べて…な話を書いていたかも…知れないです←整理しろよ、blog!!



そんな訳で、こんなのも書きたいんだよ。
一応、澤誕祝い続いてたよ、な小話でした(笑)




判りづらくてすみません。
でも私のなかでは…澤村の対は、小林さんでしかないので…名を出さずして書いてしまい、失礼しました!!



少しでも楽しんでいただければ、幸いです…

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