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軽く握り締めた手を、京は言葉無く見詰めている。
闘う瞳とは違う、少し憂いを帯びた視線を投げていた。
「この手は────嫌いだ」

「どうしたんだ、急に?」

「この手のお蔭で、色々背負う羽目になった。普通の人と変わらないものなら、もっとお気楽な人生を歩めたかも知れなかった」

握った指を開き、そこへ小さな紅い焔(ほむら)を生み出す。揺らめく焔は次第に大きくなり、京の掌を紅く染め上げた。それは消えること無く、煌々と燃え続けている。

「おっと、隠さなくても良いじゃねえか。京のこの手が無けりゃ、俺や大門のおっさんとも逢ってなかったんだぜ? ま、余計なもんもくっ付いて来たけどな」

努力をしないと言いつつ、血の滲む様な修行にも耐えてきたのだろう。飄々を装いながらも、心底では悩み続けていたのだろう。つい言葉にしてしまい、しまったと言わんばかりに口元を隠そうとした。
口元へと運ばれた、未だ焔を纏う手を掴む。京は離せとばかりに拳を握り、振り上げ、振り回す。
今まで共に闘い、競い合い、宿命に立ち向かう背を俺は見続けて来た。
自分の失態を恥じ逃げたいのだろうが、許すまいと焔の煌く手を引き、身体を引き寄せた。

「離しやがれ、紅丸!」

「嫌だ。この手を、お前の背負う宿命があったからこそ、俺は自分の居場所を見付けたんだ。お前の────京の傍に、何時までも在り続けてやる」

自分が放った恥ずべき言葉消し去ってやろうと俺は、京の背を抱き、掴んだ手の甲に口唇を押し当てた。
案の定、背を震わせ恥ずかしさを耐える京は、紅い焔に負けないくらい頬を紅くしていた。




20151227



遅くなりましたが、京の誕生日祝いに……
多分、どこかでも書いたネタだとは思うのですが、目を瞑ってやってください(苦笑)


この力が無ければ、ちょっとやんちゃな高校生(留年やが)で生きていけただろうけど、この力のお蔭で新たな出逢いがあったのも事実なんだろうな、と思いました。


紅丸贔屓の私としては、京の強いとこも弱いとこも引っくるめて「気に入っている」と思うのでありました。

お付きあい頂き、ありがとうございました!
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