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その背中は、手を伸ばせば触れることが出来る。

その心は、手を伸ばしても触れることは出来ない。

どうか――――

振り向いて。

心ごと振り向いて……私を見てください。





村雨さんと組むと、絶対にこんな扱いをされる。

だから、子供なんだ。
これだから、子供は……

失敗している訳では無いと、思う。
失敗していないから、注意されたり叱られたりはしない。
だけど口を開けば、話の最後には『子供』と付け加えられる。

「そんなに子供、子供って言わなくても良いじゃないですか!! 僕だって……僕だって……」

――――ここの一員です!!
言いたかったけど、言葉は僕が思っているほど簡単には出て来なかった。
口の中で渦巻いて、出口の無い音は嵐となり吹き荒れる。
このままだと何を言い出すか分からない、自分でも制御出来ないかも知れないと真一文字に唇を結んだ。

「言いたい事があったんじゃないのか?」

一歩も二歩も先を歩く村雨さんは振り返りもせず、コートで被われた広い背中を僕に向けたまま問い返す。
別に、と顔を見られていない事を良しとして、頬を膨らませ地面を睨みつけていた。

「……そんな風だから、子供だと言うんだ」

「え……っ?! わっ?!」

俯いていた所為で、気付かなかった。
いつの間にか村雨さんは歩みを止め、僕の方を振り向いていたのだ。
村雨さんの靴先が、視界に入った時にはもう手遅れで、大人のしっかりとした胸元に顔をぶつけてしまっていた。

「馬鹿だな。子供でも大人でもお前は、お前だ……大作」

比べものにならないくらい大きな村雨さんの両腕に、頭の先から包み込むように抱き締められた僕の耳元で、こう言った。
そして、心臓が痛いくらいに跳ねている僕の身体を、村雨さんは自分の隣に並べて肩に手を添える。

「俺と一緒に組む時は、こうして隣に居ろ。自分から後ろに下がって線を引くな。大人でも子供でも、どちらの大作でも……」

――――俺は、好きだ。

好きだ、の言葉は、僕の背に合わせて村雨さんが屈んで言ってくれた。
びっくりした僕が顔を向けると、村雨さんの暖かくて少しカサカサとした唇が、真っ赤になった頬に当たっていた。






振り向いて / 20110123







これまたン年ぶり?な村大です。
二人のやり取りで、楽しんで頂ければ幸です。
アニメ中、子供が口癖の村雨さん。そう言われるのが嫌な大作くん。
少しずつ、少しずつ歩み寄って(専ら村雨さんが折れる)行く「第一歩」になればよいな……と思って書きました。



ホントに小話ですが、お付き合いありがとうございました!!
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