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ただ単に・・・私が栗を食いたかっただけです。笑。

巻き込まれた二人よ・・・すまぬ。

そんなこんなで仕事帰りにガリガリ打って帰ってきたSS。
お馬鹿が居ますので・・・ご注意を。




うん、ちょっと感覚戻ってきた。←おっそ!!!






この時期、栗がとても美味しい。
だがしかし、とんだ厄介ものな皮のお陰か、手を出すには躊躇われる部分もあった。
故に、最近では既に剥きあがっている栗が、そのままパックしてある商品も多数発売されている。








「本来の美味さとは、己の手を炭で汚して皮を剥き、食すものだろう」

パックに入れられている栗を購入して帰ってきた拳崇に一言、庵は呟いた。
そんな面倒なことをしなくても袋を開ければ直ぐ様食べられる、簡単便利な商品があるのだからこれで十分。
そう拳崇が反論する。
文句を言うのならば食べなくていい――――
更に言い加えた拳崇は、ふい、と庵に背中を見せた。 

「な、チーちゃんも食べ。美味しいよなー。何かごねてる人いてるけど、ほっとこな」

せっかく一緒に食べようと思って買ってきたものへケチを付けられた拳崇は、白イタチのチーと一緒に食べ始める。
小さな両手に掴ませて貰った栗の実を、一生懸命み頬張るチーの姿に『可愛いなぁ』と満面の笑みをする拳崇も、同じように実を頬張る。
顔を突き合わせている一人と一匹。
ここは二人の世界、『庵』なんて人は知らないとでも言いたいのか、彼を蚊帳の外に放り出していた。







「少し……出てくる」

すっかり栗を食べつくし和んでいる拳崇とチーへ、ぽつり言葉を吐いた庵は、そのまま部屋から出ていってしまった。

「なぁ……俺、ひどい事ゆーた……んかなぁ……」

庵に背を向けていた拳崇は、出ていく時の彼の顔を見ていない。
だから怒っていたのか、そうでないのか判りかねていた。
言葉数の少ない庵は、本当も嘘も、何も言わない。
何も言ってくれない。
部屋に残された拳崇は、だんだんと不安の色合いを濃くして行き、困った表情を浮かべる。
その雰囲気に気付いたチーも小さな体を、床に座り込んでいる拳崇の膝に擦り寄せた。

「少しってゆーてたから、直ぐ帰ってくるよな……」

――――帰ってきたら謝ろう。

拳崇は、玄関ドアの方をじっ、と見つめて彼の帰りを待ち続けた。





庵のその言葉から、すぐに戻ってくるであろうと思っていたが……実際、部屋へと帰ってきたのは、出ていってから一時間以上経ってからだった。
酷い事をしてしまったと自身を責め、反省していた拳崇だったが、徐々に戻って来ない庵に苛立ちを覚え始める。
携帯へ電話かメールをしようとしたが、彼はそれを持って出ていってなかったのだ。
謝らなければとの思いは棚上げされ、

「どこいっとんねん!!」

怒り全開で玄関ドアを睨み付けていた。





*****




「……どうした?」

拳崇が待ち続けていた人が帰ってきたかと思えば、こんな間抜けな言葉を口から吐いた。
戻って来ない怒りと、全く空気の読めていない庵の態度に癇癪を起こしてしまった。

「少し、ゆーたやろ!!なかなか帰ってけーへんわ、浮気でもしにいっとったんか、ボケ!!」

聞くに堪えない雑言と、本人は全く気付いていない意味の言葉に庵は、笑って良いのか怒って良いのか判らなかった。
取り敢えず拳崇の誤解を先に説こうと、手に持っていた袋を差し出した。

「これ……なかなか見つからなくてな」

眉間の皺をたくさん彫り怒っていた拳崇も、出された赤い袋と書かれている文字に驚き、顔の緊張を解いた。
昔からある、栗の袋。
見覚えのある文字とイラストと、煎られた香り。

「意外と見つけられなくてな。結局、駅向こうのデパートまで行ってしまった」

少し居心地が悪そうにはにかむ庵へ、拳崇も怒っていた事など忘れて笑ってしまう。

――――すまん。

結局、拳崇が謝るのではなく、戻ってくるのが遅くなった庵が謝り……場を収めるのだった。




*****



玄関付近から仲良くリビングへ戻ってきた二人は、その栗の袋を開け、中身を取り出す。
こんがりとした焦げ茶色した栗は、まだ固い殻に覆われており、指で摘めば煤がそこに付いてくる。
これだから、と拳崇は思うが、庵は一向に気にしないという風で、固い殻に爪を立て割って行く。
綺麗に皮が取れる栗もあれば、渋皮が身に付いたままになり、丁寧に剥がしてやる。
用意した小さな皿の上には、パックに入っていた栗とは違う、カサカサとした焦げ茶色の栗が積みあがっていった。

「食べても良いぞ」

庵のように器用に栗を剥く事が出来ず、既に手伝う事を放棄していた拳崇は、その手元と積みあがる栗をじっ、と見つめていた。
それに気付いていた庵だが、戻ってきた時に怒鳴られてしまった事を少し根に持ち、意地悪をしてしまうのだった。
しかし、余りにも目を輝かせ、チーまで皿に手を掛け待っているのだから……この辺りで意地悪は終了と、許しを出す。

「ほ、ほんまに食べてもえーんか?」

「そんなに二人して物欲しそうにされたら……仕方ないだろう」

庵の的を射た台詞に喉を詰めてしまった拳崇は、胸元を叩いて照れ隠しをし、言葉を理解しているのかチーもふるり、と体を震わせていた。

「……ほら、拳崇。チーも」

こんもりと積みあがった栗の実を、一つ取ってはチーの口元へ、一つ取っては拳崇の口の中へ放り込んでやる。
上手い上手いと、先程食べた栗とは一味違うそれに喜び、次から次ぎへと口の中へ、胃の中へ消えて行く。皿の上にあったものは、あっという間に消えてなくなりそうだった。
一生懸命食べている様子に笑んだ庵も、食いはぐれてしまわない様に栗へ手を伸ばし啄む。
少し渋みのある栗の、噛めば甘さの漂うそれに舌鼓を打ち、更に手を伸ばす。
しかし、栗を摘んだ庵の手を拳崇はがしり、と掴み自分の口元へと運んでくる。

「俺が食べようとしている栗だぞ。まだ皿の上に残っているだろう」

「何ゆーてんねん。あんなけ俺、待たしたんや。庵はんはもう食べんでえぇ……浮気してるて勘違いさせたし……」

だから罰として、残りの栗は自分に食べさせ欲しい、と。
拳崇は、庵の煤けた指と、摘まんでいた栗もろとも自分の咥内へと運び込み、食み味わった。







甘い季節/20091020






奴らが甘いのは何時もの事で…
単に私が栗を食べたかっただけなんです。笑。

剥き栗、便利ですよね~らくちんだし指が汚れない。
あれ、爪まで真っ黒になりながら剥いて良く食べてましたが、今じゃ手軽に栗を食べられる♪

だけど、味が違うんですよね~やっぱ。
両方上手いけど、あのたまにハズレの渋々食った時の悔しさは…天津甘栗ですよね。
しかし、高いんだ…こやつ。爆。





そんなこんなで秋の味覚での一話でした。
久々にバカップル書いたら楽しいですね…っつか、こいつらしか出来ない芸当だと思う(もしくはサクナル)


駄文、お付き合いのほど、ありがとうございました!
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