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色々と語っております・・・
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きっと、夜明け前だろう。
ここ暫く冷えていると思っていたが、今日は一際、肌寒さを感じて目が覚めた。
寒さもあったが、寝ている成瀬の口から零れる騒音が、桜井の耳を襲ったのも原因していた。

(これだけ凄ければ、悪戯書きされても仕方ないな)

ベッドから抜け出し床に敷かれた布団の上、寒いのか上掛けにくるまり、丸くなっている成瀬に近付く。
彼の吐く音は収まることを知らず、四つん這いになって傍にまで来た桜井には、騒音でしかなかった。

(ご両親は、これを毎日聞いていたりするのか……?!)

これを聞くのは、初めてではない。
正確に言えば、体感したのは……初めてだった。









成瀬がこの部屋を訪れても、電車の最終時間には帰ってしまうからだ。
唯、手を繋いでいるだけの関係ではない、もっと深く繋がっているのだから良いのではと桜井は思っていたが、成瀬の方が恥ずかしがり、泊まる事を嫌っていた。しかし、
今日はどういう風の吹き回しか、成瀬が泊まると言い出したのだ。
何があったのかは判らないが、桜井にすれば大きな誤算で、喜びを隠しきれない顔は緩みっぱなしだった。
部屋で二人、他愛ない話をして、食事をして過ごす。日中の暑さを洗い流すよう成瀬に風呂を勧めると、顔をうつ伏して部屋を出て行ってしまった。彼のいない間に桜井は、客用の布団を用意し、自分の使っているベッドから少し離れた床に敷く。
本音を言えば、ベッドで一緒に眠りたいのだが、成瀬が『良い』と思えるまで、今回は待つことにした。
せっかく泊まる、と言う行動を起こしてくれたのだから、それを壊してしまわない様にと思ったのだ。



空調が程好く効いた部屋に戻ってきた成瀬は、床に敷かれた布団を見、息を吐いていた。
桜井は内に抱いた思いを隠し、成瀬の風呂上がりで濡れた髪を綺麗に拭いてやる。我慢をする代わりに悪戯に口付けてみれば、真っ赤になって睨んで来た。
可愛い仕草に笑みを残して、桜井も風呂を使おうと部屋を出る。
何事も無く、翌朝を迎える自信はある。
しかし、ちょっとした手違いで事件が起こったとしても、それはそれで互いに許容の範疇だとも理解出来ているはずだ。
だからこそ成瀬は照れはしても、悪戯を許してくれているのだと桜井は思っていた。




そんなことを考えながら自室の扉を開いた瞬間、風呂上がりには心地よい空調の風に包まれた。
そんな中、疲れからか、はたまた緊張の糸が切れたか、成瀬が大の字になって寝息を立てていた。

「もう少し、待っていてくれても良いじゃないか……」

成瀬よりも少し長めで癖のある髪を濡らす水滴を、タオルで拭いながら溜め息を吐く。
心許してくれていると思いたいが、きっと違うだろうなと桜井は、腹に手を添え笑いを堪える。
これが彼の、天然たる素直な行動なのだろう。
色気があっても困るが、無くても困りものだと、堪えた笑いを少しだけ声にした。そして、無防備な成瀬の身体に布団を掛けてやり、灯りを落として部屋を暗くする。


おやすみ――――と言えば、答えは寝息で返してくる可愛い後輩へ、笑顔を贈った桜井は、同じ様に眠りの底へ沈んで行くのだった。








その数時間後……
全くもって色っぽくない事件が起き、桜井は言葉を落とす。

「このまま押さえ込んで、襲って、黙らせてしまおうか……」

鼻先が触れそうな位まで顔を近付けても一向に目覚めない騒音を紡ぎ出す成瀬へ、愚痴を紡ぎ出すことしか叶わなかった桜井は、幸せそうに眠り続けるその顔を、暫く辛そうに見詰めていた。


幸せ、と、辛い、は紙一重。

20131201





桜井さんの誕生日に向けて、と言うか、少し前に成瀬版を書いていたものの対話。
ただ、桜井さんには苦痛でしか無かった……内容に出来上がり、ゴメンナサイと土下座する桜岡であった(笑)



お互いが天然やから、しゃーないねん(仕方ないねん)!!










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