色々と語っております・・・
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これは本当に『澤村正博』なのかと、目を見まごう程の出来映えだった。
澤村正博自身がそう言うのだから、間違いはない。
手にした一枚の写真。
誰にも見られたくない写真。
否。
澤村が描き上げた『片翼の天使』には、見て貰いいと密やかに思っている。
謝礼が出るからと話を持ち掛けられ、初めて被写体と言うものをを経験した澤村は、仕上がった写真を手渡され、酷く驚いた。
写真そのものの澤村と、撮影されたものを加工して造り上げられた澤村は、今、壁に立て掛けられている姿見の中の自分自身とは全く違っていたからだ。
穴が開くほど見詰めても、これが『澤村正博』と言う名の男だと見破る事は出来ないだろう。
「やっぱり被写体が素敵だと、写真の仕上がりも素敵だわ」
「こんなに変わるんすか?」
「ええ、やりがいのある作業だったわ。熱が入りまくっちゃった」
そう話す先生は、にこやかに写真の中の澤村を眺めている。
***
初めてこのスタジオに一人やってきた時は、どうなることかと思った。
見るもの触れるもの、何もかもが斬新で新鮮で、通された部屋にあるものを凝視していた。
部屋に依頼主が現れているにも関わらず、気付かずにいたくらいだ。
声を掛けること無く、足音を潜ませて澤村へ近付いた依頼主は、その肩口から見ているものを覗き見る。
「君、いい趣味してるわね。これ……私も気に入っているのよ」
「うわぁっ!!」
過敏な神経持つ癖に、背後に立たれていても判らずに居たことと、今流行りのオネェ言葉の喋りをする依頼主に驚き、素っ頓狂な声を上げてしまった。
無理もないかと苦笑いした依頼主は、部屋に設えられてあるソファーへ悠然と、そして美しい所作で腰を掛け、足を組んで見せる。手のひらを合わせて口許を隠し、まだ驚きで身を固くしている澤村の内を視る様に、真摯な瞳を向けた。
今まで散々不思議なキャラクターを披露してきた依頼主の、プロ根性を意識させられた瞬間、澤村も何故此処へ来たかを思い出す。
取り繕った綺麗さを見せようとはせず、何時もの『澤村正博』の行動をする。
依頼主へと身体の向きを変え、少し斜に構えた顔付きをした。
上から見下ろす視線は鋭角で、何も信じないと訴えている。両手をデニムの後ろポケットへ差し込み、胸を軽く反る。
暫し、見上げる依頼主と、見下ろす澤村の間に流れるは沈黙と緊迫と、時計の刻む針の音だけだった。
先に動いたのは、依頼主だった。
口許を隠したままでいたが、組んだ手を解いて澤村を手招きする。
声を出す事も無く、そして音を荒立てる事も無く、呼ばれた方へ歩いて行く。
依頼主の腰かける真向かいのソファに腰を下ろすと、両膝の上に肘を付き五指を組む。その上に顎を乗せた澤村は、対峙するように依頼人と視線を合わせたのだった。
「……合格。君、本当に高校生なの?大人びた所とか、凄く良いわ」
「色々あるけど年は嘘、吐いてないっす」
「ならOK。早速だけどモデル、お願いできるかしら?」
「そう言われて来ました。俺が使えるなら……」
「もし断られたら私、土下座してもお願いするところだったわ。澤村君、宜しくね」
「こちらこそ。初心者で……どうすれば良いか、から聞きますけど?」
早速、自分が何をしに此処へ来ているのかを示すように仕事の話を切り出した澤村に、依頼主は頷き、自分の表現したいもの、写真へ記憶させたいものを説明して行く。
細部に至るまで妥協を絶対にしないと言うプロの意識を見た澤村も、これから自分が『する事』に正直逃げたくなったが、その熱い思いに応えてみたいとも感じた。
「じゃ、明日一日かけて造り上げるから……少し覚悟をしておいてね」
「判りました。宜しくお願いします」
しっかりと腰を下ろしていたソファから立ち上がる澤村は、深々と頭を下げる。
若々しく、若々しいが故に尖っている部分も魅力があると心底満足した依頼主は、澤村のだらりと下がっている手を取り、握手をしっかりとする。
明日一緒に仕事をするスタッフ達の紹介と、明日一日の仕事だが少しでも親交を深めたいと食事へ誘う。しかし澤村は、断ろうと両手を胸の前に出した瞬間、部屋の扉が開き、外で聞き耳を立てていたスタッフ達が雪崩れ込んでくる。
「もう何時ものお店、取っちゃってまーす!」
「かっ……勝手に!!」
「どうせそこだって決まっちゃってるんですから、良いでしょ先生!」
あっと言う間に取り囲まれた澤村と依頼主は、腕を引かれ、背中を押され、連れ出されてしまうのだった。
スタッフ達が依頼主を『先生』と呼ぶ事に不思議は無かったが、後にその先生の名を聞かされた澤村は、あまりの大物に肝を冷やしたのである。
「はな・前」
20120627
あかん、ちょっとだらけてきました(T.T)
一旦上げて、後半…へ続きます。
同じ頁見すぎたのと、ここまで三回くらい強制終了かかってデータ飛んだんで、仕切り直させて頂きます~勝手に(笑)
オリジナルだしたら…やたらと動いて大変っす…ははは。
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