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何か欲しいものは無いか?と、気まぐれに聞いてみた。
すると。
桜が欲しいと、奴は言った。


「馬鹿め。桜は春だろうが。この季節にある訳がなかろう」

「せやから欲しい、ってゆーたんやんか」

「なら春まで待て」

「嫌やーっ!!今すぐ欲しいんや!!」

確かに欲しいものは無いかと問い掛けたのは自分だが、これほど理不尽な要求をしてくる奴があるかと、目の前にある赤茶色した髪を叩いた。
相手は同じ男だ。
力加減をする必要はあるまい。
加えて要求が気に入らない。
だから思い切り怒りを叩いてやった。

「何すんねんっ!聞いてきたんは、庵はんやろうっ!」

「そうだ。だが、もう少しマシな要求をしろ」

「……せやから、桜が欲しいんやって。庵はんの誕生日に見れる桜が……欲しいんや……」

何故、此処まで意固地になって桜を強請っていたのか、口から落ちた言葉で判った。
一緒が良い、と言いたいのだろう。
同じものを、同じように愛で、祝いたいのだと。
しかし、季節は秋。
桜は、春の花だと何年も日本で生活して知っているだろう。
シャツの袖口を引っ張り、上目遣いに半分泣きそうな顔をして懇願している奴の頭をもう一度、無理は無理だとの思いを込めて叩いた。
今度は宥めるように、あくまでも軽く、だ。

「いい加減にしろ。帰るぞ」

「…………」

なかなか動く気配も見せない奴の襟首を掴み、引きずるようにして俺は歩き始めた。
拗ね、口も聞かない奴は、ただ俺にされるがままになっていた。
これだからガキは困る、と思った刹那、目の前に現れた花屋に……奴の要求したものがあった。

「待っていろ」

まだ拗ねたままの奴を置き去り、俺は花屋の入口を潜った。










「ほら、望みの桜だ」

「……ちゃうやん。この花、桜ちゃうやんか!」

「馬鹿な頭で考えろ。それもれっきとした桜だ」

花屋で見付けたものを束にしてもらい、拗ねていても言い付けを守っていた奴に投げ渡した。
すると、予想していた答えが帰ってくる。
望みのものを与えたのだからこれ以上、奴に構う事はない。
一言だけ言葉を付け足した俺は、花束を抱えたまま立ち尽くしている奴を置いて歩き始めた。


「この季節にしか咲かない、お前だけの桜だ」






暫くして。
何かに気が付いたか奴は、大声で叫びながら追い掛けて来た。







秋桜
20110926






病院の待ち時間にガリガリ、と。
一人称嫌い~苦手~特に庵、喋んないし言葉難しいから~辛かった(笑)


iPodに入っている曲を選んでいる時に発見。
ナツカワリミが歌うカバーが入っていたんですが、この時期にはよく聞きますね~ラジオからとか。
もちろん、元歌を。
作った方が歌うのは、さらに味があって…声のせいか、物凄い切ないんですよ。
もともと切ない歌なんですけどね。



そんなこんなで、ネタ。
庵の誕生日には桜、少し早いですが咲きますね~
秋桜の曲題をみて、拳崇の誕生日にも桜じゃん~と書いてみました。

花は違うけど、同じ「桜」で繋がっている…と言いたかったのでした(笑)



ちょっと一人称ヘタレ過ぎるんで、すみません…(涙)

こんなお話でしたが、誕生日祝いに…
おめっとさん、拳崇♪





小話、お付き合いのほど、ありがとうございました!
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