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空を翔ける箒星に乗り、
私は自由な身になりたいと――――切に願う。




「あんた、下が大騒ぎしてんの分かってる?」

「……すまん」

「ったくよ。今更、逃げらんねぇ運命(さだめ)背負ったんなら、腹ぁ括れよ」
側近の美丈夫に、窘めるにしては手厳し事を言われた若き王は、瞳に空を映したまま答える。
王の心を模する闇色の空は、唯、静かにその色を湛える。
その闇を舞う蛍の様に星々は、淡い光を燈していた。時折、箒星となり空を自由に翔け、流れて行った。

「……腹括れっつー方が、無理な話し……か」

輝きの無い闇の中は寒々としていて側近は、身体が冷えて来たのか己が両肩を抱き、撫でる。
暖を求めるが如く、時には力強く、時には緩やかな動きでそれを繰り返していた。

「騒がせてすまなかった。もう少しだけこのままで……居させてくれ」

未だ側近へは顔を向けず、相変わらず空だけを眺めたままの王は、冷たく凍えた白い息と、切なさを含んだ声色を零す。
相当前からこの場所で佇み居るのだろう。
このまま、この闇色に溶けてしまっても構わない。
そう言っている様に、冷えきった身体と顔は白く儚げであり、ともすれば、腰掛けている城壁から空へと還ってしまいそうだと側近の眼には見えた。




彼が、好き好んでこの『王』の位置に着いた訳では無い。
本当ならば、兄がこの位置に立つはずだったが疵を負い、疵無い弟の彼に継承が降ったのだ。
兄の方が人当たりも良く、何かと機転も効き、懐も広い。
このような人になりたいと彼は思ったものだが、それは無い物ねだりだと直ぐに気付かされた。
兄の様には決してなれないのだ……と。
兄弟だからこそ全くの正反対なのだろうか。
弟は、相成れない兄の背を追い、見詰め今までを生きてきた。




「俺には……荷が重過ぎる」

流れ行く数多の星に向け、白い息だけで言葉を生んだ王の顔にひた、と冷え切った両手を添えた側近は、星々から眼を外させる。
今まで星だけを映していた視界に、自分だけを映す様に仕向けた。
逃がさないと視線を合わせ、額同士を擦り合わせる。王は息を飲み、その眼を見開いた。

「兄貴みたいに成ろうとしないで、あんたはアンタで良いじゃねぇか……」

――――何の為にオレが、あんたの傍に付いてるんだ?

日頃、王より口が悪いと散々ぱらに言われている側近の、精一杯の励ましも口悪くいて、半分罵りに聞こえてしまうくらいだった。
しかし王が不器用である様に、この側近もまた不器用な人間でいた。

「そんなあんただから……オレが居るんだろう」

もう少し王の熱に触れていたいと思った側近の美丈夫は、名残惜しげに額を離す。そしてもう一度、見開かれたままの瞳を見詰めて刹那、彼の唇を自分のそれで甘く噛んだ。

「ずっと……ずっと、あんたを護ってやる」

金の髪した王の頭を側近は、己の胸に仕舞い込むとしっかりと両の腕(かいな)で抱いた。
すると王は、その口悪い暖かさに小さく笑みを零すと頷き、細いある側近の背にしっかりと爪を立てて抱き返したのだった。





近し君の、優しさ。
20110220







すみません、すみません、すみません…
もうもうナニガナンダカな話で失礼しました。


ずーっと前にチラッと書いた劉孔の展開に似て非なるもの(笑)

王様のコバに側近のサワ。
ちょっと自分的に楽しんでる桜井殿と成瀬要のコバサワ版。


ナンヤカンヤ言っていても、結局どんな立ち位置や設定作っても…コバサワなんだよ!と言い張って逃げます。



すんません、あんまり頭回ってないんで…後でコメントや内容を読み返すの怖いです(笑)




遅くなりましたが、コバースデー小話でありました。
あー
やっぱりヘタレコバになった…(T_T)
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